質問主意書

第26回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

引揚者の福祉厚生に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十二年四月二十三日

千田 正      


       参議院議長 松野 鶴平 殿



   引揚者の福祉厚生に関する質問主意書

 終戦後政府において当然処理すべき事案でありながら、それぞれの理由から処理することのできなかつたものについて、引揚者給付金実施の機において全引揚者の福祉厚生ならびに、その将来への発展の拠点とするような公共施設を作ることによつて解決してはどうかと考えるので、左記により質問をする。

    記

一、次に質問する諸懸案の経費はそれぞれ政府において、保留されているか乃至は考慮せらるべきものであると考えられる。
 然し、これ等のものは極く一部を除き殆んど全部が特殊な事情にもとづき受領者のないものと考えられるので、この経費を一括支出し、それによつて東京都内に引揚者会館(仮称)を建設し、ここにおいて
(一) 引揚者海外再移民及び引揚者の職業補導
(二) 青年の教育助成
等の公益事業を行うことが適切であり、又在外財産問題審議会の答申による引揚者の職業補導の趣旨にも添うものと考えるが、政府の所信如何。

二、戦前政府が外地に割当をした戦時公債は四億五千万円(三・五分利附)とのことである。これについては昭和二十二年七月三十一日参議院議員北条秀一氏の質問書に対して同年八月八日内閣総理大臣片山哲氏名をもつて答弁書が提出されているので、それによつて明らかなところである。
 右の国債の元利はその後の利子を加えて政府において保留されている筈であつて、十二年分の利子計算として元利合計六億三千八百二十万円となる。

三、昭和二十年八月終戦後満洲国政府は、同国の郵政貯金の払戻しを日本政府に依頼し、このため現金一億五千万円を委託した。日本政府は、この委託金でもつて右郵政貯金の払戻し約三千万円を行つたが、G・H・Qの指示により、払戻しを中止し委託金は、そのまま政府が留保し、今日に至つている筈である。

四、戦前台湾において、日本勧業銀行をして、日月潭電源ダム建設のために六千万円の勧業債券を発行せしめたが、これは今日迄払戻しが行われていない筈である。

五、終戦後政府は大蔵省令(昭和二十一年)をもつて、引揚者の在外財産申告を強制した、すべての費用は全部引揚者の負担とし、且つ未申告者に対しては処罰規定さえももうけたものであつた。
 右は占領政策による已むを得ないものであつたとしても、当時の引揚者の事情からして甚しい悪政であつたことはいうまでもない。昭和二十四年末参議院引揚特別委員会において、北條秀一議員がこれを取りあげ、政府の責任を追求したことに対して当時の大蔵次官長沼弘毅氏は政府に責任のあることを認め、申告数四十六万として、これに要した費用を一件百円とし、計四千六百万円程度は将来政府において善処すべき旨弁明した。但し、右については長沼次官の要請により速記を停止したので記録は残つていないが当時委員会出席者によつて立証せられることである。

六、以上二、三、四、五、を合計すると八億六千四百二十万円以上の金額になる、この金額を一、の事業のために支出してはどうか。

七、なお、二、三、四、五、の四項についての具体的事実及びその元利金の処置がいかになつているかの二点について、それぞれ詳細に答弁をして頂きたい。