質問主意書

第24回国会(常会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質第九号
  昭和三十一年三月二十日

内閣総理大臣 鳩山 一郎      


       参議院議長 河井 彌八 殿

参議院議員須藤五郎君提出小笠原群島等の日本復帰等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員須藤五郎君提出小笠原群島等の日本復帰等に関する質問に対する答弁書

一 政府は、平和条約発効以来あらゆる機会において小笠原群島を含む平和条約第三条の地域の管轄権返還に関する日本国民の要望を、口頭又は書き物をもつて、米側に申し入れ、米国政府の配慮を要請しております。

二1 小笠原諸島関係者に対する援護等の基本方針について

 小笠原諸島住民の援護等に関しては同諸島住民は小笠原諸島への帰郷が認められないことにより損失をこうむつておるので、その損失の補償につきアメリカ合衆国に対し折衝するとともにその生活の窮追している実情にかんがみ、差当り政府として見舞金を支給しその生活の援助並びに更生に資することとしている。

2 昭和三十年度支出された約一億円の支出決定にいたる経過について
 小笠原住民は昭和十九年に本土に疎開を命ぜられて以来、生活の基盤を有しない本土に置いて極めて窮迫した生活を送つてまいつたので、昭和二十九年度において対日平和条約発効前の損失等を勘案し、その生活の援助及び更生に資するため約一、七〇〇万円の見舞金を交付した経緯があり、更に同島住民より対日平和条約発効後の損失に対する補償の要請があつたが、政府としては小笠原諸島住民の実情並びにその要望等を慎重に検討した結果、昭和三十年七月八日に同諸島住民の小笠原諸島への帰郷及びその帰郷を認められないことによる損失の補償に関してアメリカ合衆国に対し引続き強力にその実現を要請するとともに同諸島住民の窮迫せる生活の実情にかんがみて見舞金を支給することを閣議において決定したのである。

3 閣議決定の内容について
 閣議決定の内容の要点は左のとおりである。
(一) 見舞金は差当り昭和三十年度において一億円の範囲内で支給することとし、平和回復善後処理費よりこれを支出すること
(二) 見舞金は昭和十九年三月三十一日において小笠原諸島に居住し、その日以降本土に疎開し、まだ同諸島に居住することを認められない者で、平和条約発効後アメリカ合衆国が帰郷を認めないことにより土地に関する権利の行使の制限を受けているもの又は同諸島において農業、漁業その他の業を営むことができないものに対しこれを支給するものとし、その支給を受ける者の範囲、支給額並びにその支給の手続等は内閣総理大臣が大蔵大臣と協議して別に定めること
(三) 見舞金のうち、相当部分はこれを小笠原島帰郷促進連盟で協議決定する共同事業の資金にきよ出し、小笠原諸島住民相協力してその更生の途を図るよう指導すること
(四) 小笠原諸島住民がこうむつている損失に関し、アメリカ合衆国から損失の補償又は見舞金等を受けることとなつた場合においては、その金額のうち、本件によつて国が支出した見舞金の額に相当する額は、これを国に帰属せしめるものとすること

4 支出基準の内容及びその担当機関について
 見舞金の支給を受ける者の範囲、支出金額並びにその支給の手続等については、昭和三十年九月七日内閣総理大臣が大蔵大臣と協議して決定したが、その内容の要点は左のとおりである。
(一) 見舞金の支給を受ける者の範囲は昭和十九年三月三十一日において小笠原諸島に居住し、その日以降本土に疎開し、まだ小笠原諸島に居住することを認められない者で、平和条約発効後アメリカ合衆国が帰郷を認めないことにより、土地に関する権利の行使の制限を受けているもの並びに漁業協同組合の組合員として漁業を営んでいたものとすること
(二) 見舞金の支給金額は、土地については宅地、農地別、所有農地、賃借農地別、土地の等級別に基準額を定め、これによつて算出した額、漁業については漁業者の昭和十六、十七、十八年の漁業所得額の比率によつて算出した額を支給すること
(三) 見舞金の支給に当つては、見舞金の支給を受けようとする者に所定様式の受給申請書を東京都を経由して内閣総理大臣に提出せしめ、東京都はその受給申請書を受けた場合、これを審査し、その申請書の正当なることを確認して進達するものとすること
(四) 見舞金の支給につき小笠原島帰郷促進連盟委員長が見舞金受給資格者からの見舞金受領委任状を提出する場合は、内閣総理大臣はこれに対し、見舞金を一括交付することができることとすること
なお、この見舞金の支給事務の担当機関は総理府南方連絡事務局である。

三1 見舞金の総額並に目的別の金額について

 見舞金の総額は約九千九百万円であつて、その内訳は宅地に関する見舞金約六七七万円、農地に関する見舞金約五、六四七万円、漁業に関する見舞金約三、五七五万円の予定である。

2 団体への支出及び個人への支出等について
 昭和三十年七月八日閣議決定による小笠原諸島住民に対する見舞金はすべて個人に支給されるもので、団体は支給の対象となつていない。
 本年三月十六日現在において、支給済総額は六四、五六〇、四九五円であつて、その支給の内訳は左記のとおりである。
(一) 宅地に関する見舞金 
   支給金額 四、三一〇、一四〇円
(二) 農地に関する見舞金
   支給金額二九、九六九、八三五円
(三) 漁業に関する見舞金
   支給金額三〇、二八〇、五二〇円
  合  計 支給世帯数     四六五世帯 
   支給金額六四、五六〇、四九五円

 ただし、右の金額はすべて小笠原島帰郷促進連盟委員長に対する委任状を添付して申請されているもので、その支給は小笠原島帰郷促進連盟委員長を受領代理者とし、これに対して支出されているものである。
 なお、個人の生活等の現状から見た効果については、この見舞金の支給は小笠原諸島住民の更生に極めて効果があると考えている。

3 未支出金とその理由について
 未支出金額は約三、四四四万円あるが、既に見舞金の支給の対象となつている者の全員の申請書が提出されておるので、本年度内には、その支給事務を完了し得る予定である。
 なお、これら申請書の提出の遅れた理由は、請求事務につき鋭意指導はしたが、申請に必要な各種の書類の整備に日時を要したものが相当あつたためである。

4 昭和三十一年度の支出計画について
 昭和三十一年度の見舞金の支出については未だ決定するに至つていない。