質問主意書

第24回国会(常会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質第二号
  昭和三十一年二月七日

内閣総理大臣 鳩山 一郎      


       参議院議長 河井 彌八 殿

参議院議員青山正一君提出旋網漁業政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員青山正一君提出の旋網漁業政策に関する質問に対する答弁書

一、旋網漁業の調整、転換

(一) 大海区制の問題
現行まさ網漁業取締規則(昭和二十七年三月十四日農林省令第八号)による北部太平洋海区の適用範囲を拡大する措置については、当該海区の現状より考えて、当分の間現状のままでよいと思料する。
(二) 隣接海区との調整
隣接海区の入会調整は、漁場の大小、資源量の多寡、漁期の長短等のほかに、他種漁業との直接及び間接の競合度合を充分考慮し、検討の上調整すべきであると思料する。
(三) 大型船漁業の転入抑制
特定海区内の同種漁業間及び旋網漁業と他種漁業間の調整を考慮して、極力競合摩擦の生じないよう従来とも措置している。
(四) 北洋への転換措置
昭和三十一年度北洋出漁の鮭鱒独航船については、旧暦十二月七日発表の許可方針の通り沿岸漁業の資源保持及び過剰操業力緩和等の理由に基いて中型機船底曳網漁船及び大臣許可鮭鱒流網漁船から選定することとし、現在その出漁準備を整えつつあるが、今後についてはこれら漁業の推移を検討の上独航船の選定を行うことと致したい。

二、イワシの不漁対策

 イワシの不漁対策については、資源に関して、従来より鋭意調査研究を進め、本漁業の主目的の一である大羽イワシについては、海況の変異が重要な影響を有することが判つてきた次第であるが、更に充分科学的研究を進めた上措置したい。

三、魚群探検飛行の実施

 魚群探検飛行が本漁業の操業に益する処大なるものがあるので、この種市業の育成については充分研究したい。

四、旋網漁業に関する金融施設の改善

(一) 融資のワクの拡大
(1) まき網漁業の漁船建造についての農林漁業金融公庫の融資については、全般的な漁業調整ならびに漁業転換の問題をも充分勘案の上考慮する。
(2) 合成繊維漁網の個人融資については、公庫資金枠の確保を図るとともに、あわせて漁業信用保証制度の活用を図る。
(3) 公庫融資は、一般的に担保力の低い中小漁業者に対する設備資金の融通を目的とするものであるから、担保物件を融資対象物件に限定することは、原則として妥当であるが、対象物件のみでは担保価値に乏しい場合もあるので別箇に担保を徴求する等の措置も場合によつてはやむを得ないと考える。組合より転貸の場合の融資手続の簡素化及び融資条件の緩和については、検討の上措置いたしたい。
(二) 漁業信用基金協会の運営改善
(1) 設備資金枠の拡大については、実情に応じ個別的に処理したい。
(2) 保険料を含む保証料の引下げについては保証の進捗状況及び保険事故率のてい減状況を充分勘案の上措置したい。
現在系統金融機関の貸付金利については通常の貸付金利よりも低い金利が適用されているが、最近における金利低下の動勢に応じ研究の上善処したい。
(3) この保証保険制度は、担保力の不足な中小漁業者の金融促進を目的としているので原則としては事業と人物を主眼として保護決定をするよう指導している。ただし、場合によつては債権保全のため物的担保を徴求するもやむを得ないと考える。

五、漁船保険の改善

(一)(1)及び(2)義務加入制度は、国が漁船所有者に義務を課し、またそれに伴うて国庫負担金を受ける権利を設定する制度であるから、設立、解散又は加入、脱退が自由な漁業協同組合をこの制度の基礎とすることは制度の趣旨に照して適当でないと思われる。従つて現行義務制を改めて地区又は業態別の協同組合の組合員のみを対象とする義務付保制度を実施することは困難である。
(3) 一年未満の保険期間による普通損害保険を実施することは困難であるが、現に実施している長期休漁陸揚期間のある漁船についての保険料の調整等につき、更に検討をしたい。
(二) 漁具について分損填補を実施することは技術的見地からなお研究を要するが、両手捲等の場合における全損保険料率についてはこれを引き下げるよう検討したい。

六、魚価の安定対策

(一)及び(二) 魚価の安定対策としては、さし当り出荷の調整、輸送手段の増強及び冷蔵庫施設の利用を更に推進したいが、消費拡大対策、流通改善対策については、新冷凍食品普及等について更に充分検討したい。

七、漁業課税方法の改善

 漁業の不漁並びに災害対策準備金制度については、他産業との関連もあるので充分研究の上検討することにいたしたい。
 漁業用財産の耐用年数の適正化については、実態を充分調査研究の上措置したい。

八、昭和三十年十二月の暴風災害の復旧並びに救済措置

 昭和三十年十二月の暴風浪災害の復旧対策については、漁港については、関係法規に基く復旧事業費の国庫補助、漁船その他の施設については農林漁業金融公庫からの融資をこの災害に適用する措置を講ずるよう準備しており、漁具の購入、その他漁業経営に必要な資金については「天災による被害農林漁業者に対する資金の融通に関する暫定措置法」の本災害へ適用する施行令を二月七日から施行することになつている。