質問主意書

第22回国会(特別会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参賀第七号
  昭和三十年七月十九日

内閣総理大臣 鳩山 一郎      


       参議院議長 河井 彌八 殿

参議院議員鈴木一君提出農業協同組合に対する通運事業免許に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員鈴木一君提出農業協同組合に対する通運事業免許に関する再質問に対する答弁書

一、六月二十四日付補足答弁は、農林省と連絡了解ずみである。

二、1 確保数量の大いさは、駅勢、申請者の事業規模又は事業計画の内容等に応じて健全経営を維持できる程度のものである。したがつてこれらの内容によつてその大いさは異る。かつ、取扱数量と集配数量の関係も、当該駅の貨物の流動状況例えば荷主の集配需要数量等によつても異るものである。

2 健全経営の収支計画の基準は収支の内容においても適切なものであり、収支のバランスがとれて投下資本に対する企業一般の利潤が確保されることである。

3 農協の行う経済事業が非営利事業であるという理由で採算を考える必要がないということはいい得ないと考える。

三、1 店舗、倉庫等の施設は企業の安定性という見地から自ら所有することは望ましいが、必ずしもそれが絶対要件ではない。賃貸借契約等により完全に使用しうる状態にあればよい。しかしながら人格が異り同種の事業を経営しているものの間における場合において名義貸等の事態が発生するおそれがあると認められるときは、所有を要件とする。

2 名義貸等のおそれがないと認められた場合において免許した事例はある。

四、申請駅の営業貨物がどの程度の数量を必要とするかは、当該業者の規模、申請事業計画の内容、当該駅の貨物の内容、または既に免許を受けた業者が支店なり営業所を設置する形式で進出するか、あるいは全く新しく進出するか等の相違によつて判断を異にするので、基準を具体的に表現することは困難である。

五、昭和二十九年三月三十一日現在における複数化の状況を駅数について見ると、国鉄三、八六五駅中複数化された駅は八三六駅、未複数化駅は、三、〇二九駅で、私鉄一、八六九駅中複数化された駅は一六一駅、未複数化駅は一、七〇八駅である。又貨物取扱数量について見ると、二十九年十一月分で全駅の貨物取扱数量二、八一一万トンに対し、複数化された駅の貨物取扱数量は、一、五二六万トンである。
 複数化された駅については、当該業者のうちに特に荷主公衆に不便を与えている等の特別の事情のない限り更に新たな供給力を投入して不必要な混乱を起すようなことは避けたいと考える。

六、1 左記のとおりである。
申    請    者申請年月日聴聞会年月日免許却下年月日
兵庫県運輸農業協同組合連合会二五、一二、 四二六、 六、一二
二六、 六、一三
却下二六、一一、一九
滋賀県経済協同組合連合会二六、 五、二二二六、 六、二六免許
却下
二六、一一、一九
愛知県販売農業協同組合連合会二六、 二、二七二六、 七、一八免許
却下
二六、一〇、二三
宮城県経済農業協同組合連合会二五、 九、一五、二七、 五、二三免許
却下
二八、 八、二七
滋賀県経済農業協同組合連合会二七、一〇、三一二八、 九、一八却下二八、一一、 五
富山県販売購買農業協同組合連合会二七、 五、三〇二八、 九、一八免許
却下
二八、一一、 五
秋田県経済農業協同組合連合会二七、一二、一〇二九、一二、一四却下三〇、 六、一七
富山県販売購買農業協同組合連合会三〇、 一、 八目下審査中   

2 前項八件のうち、比較的長期間を要したものは、左の二件である。

(イ) 宮城県経済農業協同組合連合会
 本件については、約三ケ年を要しているが、本案審査途中において販売連、購買連の合併がありそのため同会の財務状況等について再調査を必要としたためである。

(ロ) 秋田県経済農業協同組合連合会
 本件については、約二年七ケ月を要しているが、申請当時申請事案が多かつたこと、申請駅が比較的遠かくであつたこと、申請内容が他の案件よりも複雑であつたこと等のため調査等についてかなりの時日を要した点もあると思われるが、かかる期間を費したことは遺憾である。今後申請事案の審査方法等について極力改善したい。

3 申請当時の業務量、当該事案の内容、運輸審議会の業務状況等により一律にその期間を明示することはできないが、おおむね六箇月位の期間は要するものと思われる。事案によつては、更に時日を要するものもある。期間を更に短縮することについては、極力努力したい。

4 比較的長期間にわたつた事例はあるが、これは、免許を殊更に阻止しようとしたものではなく、前に述べた申請当時の客観的事情によるものである。

七、1 既存業者のうちの特定事業者とは、日本通運のことを指すものと思われるが、通運事業の複数化が行われて六年を経過し、貨物の発着数量の多い駅は、おおむね、複数化を完了し、新規業者の数も増加して、通運事業の民主化も着々と進ちよくしているが、日本通運の資力を考えると事業の較差も認められないわけてもない。しかし、通運事業の事業場は、全国各駅に分散しており又作業面の機械化もほんの一部に行われたに過ぎず、その大部分が労働力に依存している現状では、資本力の大きなことが絶対に有利であると即断することはできないと考えられる。このような通運事業の後進性を考えると、現在の複数制は、既存業者には相当の刺戟を与え、相互発展の態勢は徐々に整えられて行くものと考える。

2 新規業者の系統取引を急いで資力信用薄弱な業者を進出せしめては、通運取引上好ましくないので経済情勢の推移に応じて種々施策を講じて行きたい。貨物運送制度の面でも新規業者が対等の資格で競争し得るよう措置して来たが、新規業者も発足後まだ日が浅いのであるから、今後資本力の充足をはかり豊富な経験を積むことによつてその内容の充実に努めるよう適切な指導をして行きたい。

3 通運事業は、荷主や物品に制限のない一般業者が行うことが一般の荷主の需要に応ずるゆえんであるので、一般業者によつて通運の隔地取引が行われることが望ましい。したがつて一般業者によつては荷主の需要を満たすことが通切でない場合に限定業者の進出を考慮したい。

八、1 羽後矢島、東能代、横手、十文字の申請各駅は、既に複数化され各既存業者の取扱実績に徴しても更に供給力を投入する必要はない。

2 角舘駅、一日市駅は、農協名義貨物の数量は僅少であり申請計画数量を確保することは困難と思われる。

3 その他の駅については、駅発着営業貨物そのものも少く需給の均衡からも新たに通運供給力を投入する必要はないものと認められ、かつ、申請者名義貨物の数量も極めて少く申請計画数量を確保することは困難と思われる。

4 なお、申請者直轄の支所の所在地は、すでに複数化された東能代、横手、十文字の各駅のみで、その他の駅においては支所がなく、店舗等の施設が単協に依存している経営形態は望ましいものとは認められない。

九、1 運輸審議会の議事は出席者の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところである。

2 小数意見はない。

3 (1)(2)の答弁により明らかである。

十、農協の免許申請も、通運事業法に規定する免許基準に照らしてその可否は決定せらるべきものであるから更に一定の基準を設ける必要はないものと考える。