質問主意書

第22回国会(特別会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質第五号
  昭和三十年六月二十一日

内閣総理大臣 鳩山 一郎      


       参議院議長 河井 彌八 殿

参議院議員田中一君提出国土総合開発に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田中一君提出国土総合開発に関する質問に対する答弁書

一、特定地域における事業は広汎多岐にわたり、特定地域内の事業の推進を図るためには、地域外の事業との関係、引いては各事業の国全体としての進め方についても充分考慮する必要があり、特定地域に特別の予算項目を設定することは慎重に考究すべきことであつて、今後充分検討いたしたい。
 然しながら、国土開発審議会の議を経て閣議決定された特定地域開発計画が、その実施の面で充分な進捗をみていないことは事実であり、又各省にまたがる各種事業が相互にバランスのとれた進捗をみることが特に必要であり、今後一層実施の推進特に実施の調整に充分の努力を傾注したいと考えている。又この調整の一方法として、調整費の計上も考慮されるところであるが、予算編成技術等の関係もあり慎重に検討いたしたい。

二、昭和三十年度に於ける総合開発関係予算全般としては、各事業が不均衡であるとは考えない。然し地域別に事業費を配分した際に若干の不均衡が生ずることは従来の経験に徴しても考えられるので、これを是正するため予め調整を要すると考えられる諸事業については、経済審議庁が中心となつて積極的に調整を図ることとし、又年度の途中で生じて来る種々の調整を要する問題についても、出来得る限り各省の協力を得て実施に遺憾なきを期したい。

三、総合開発を実施するため、地域毎に調整機関を設けることは、現在の行政機構を複雑にし、現下の大きな要請である行政簡素化の方向から言つても問題であり、調整機関の設定は現在のところ必要であるとは考えない。

四、総合開発事業は道路、港湾、電力、治山、治水、かんがい等多岐にたる総合的事業であつて、国又は公共団体が実施することを適当とするものもあり、従つてこれら事業を全面的に一元的に行うために電源開発株式会社を発展的に解消し、総合開発公社の如きものを設け、その実施機関とすることは適当とは考えない。
 なお、水資源の有効利用等一定目的をもつた実施機関については、今後慎重に検討したい。

五、総合開発については如何にしてこれが推進を図るかが大きな課題であり、前各項の御質問にもある様に、今後なすべき大きな問題が種々残されているのであつて、今迄は主として計画立案の段階であつたが、今後は愈々計画を実施し、完成する段階に移つて来たので今後残された問題を充分検討し、適切な推進方策を確立し更に実施に移して行くためには、これを専門に担当する部が必要であると考える。

六、科学技術に関する行政を総合的観点から行うためには、現在の機構を改める方がよい点もあると考えるが、如何なる形において改めるべきかについては運営上種々の問題もあるので、今後慎重に検討いたしたい。
 なお、朝日新聞の記事の件は、政府としては、未だ纏つた構想はもつていない。

七、経済審議庁の機構の改正については、長期経済計画が既に実施の段にきているので、これの円滑な推進を図るため今回必要最少限度の改正を考慮しているのである。即ち長期経済計画の策定及び推進上必要な資料及び説明の要求権と長期経済計画推進上必要な勧告権を新たに規定し、これらに伴つて内部部局の構成所掌事務の変更等の改正を行うこととした次第である。
 勿論従来より経済に関する基本的政策の総合調整は行つてきたのであるが、長期経済計画を強力に推進するためには不充分であるので、今後は今回の改正に基き、積極的に総合調整を行つてゆくようにいたしたいと考えている。
 また六カ年計画のような大きな作業を行うためには、事務量も増大するものと考える。
 なお、原子力を含めた科学技術行政機構の問題は、原子力機構に関する原子力利用準備調査会の意見も近く纏まると考えられるので、これ等も参考にして、慎重に検討したいと考えている。

八、今回の機構の改正は、以上申し述べましたように、第一段として長期計画の推進のため必要最少限度の改正を考えたものであつて、その意味で充分意味があると考える。
 なお、民間有識者の意見を広く経済政策の面に反映せしめるよう経済審議会等を今後積極的に活用することを考えており、経済審議庁を経済企画の中心的機構にしてゆくよう努めたいと考えている。