質問主意書

第22回国会(特別会)

質問主意書


質問第八号

建設省直轄堰堤工事補償に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十年七月十一日

鈴木 一      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   建設省直轄堰堤工事補償に関する再質問主意書

 先般首題に関する質問主意書に対し、六月二十八日附答弁書を受領致しましたが、右答弁書は質問の趣旨に対して充分とは考えられないので、左記の通り重ねて質問いたします。
        記

一、答弁書によれば、ダム建設による損失補償については、基準に基いて客観的評価を行うとあるが、これはいわれるまでもなく当然のことである。
 然るに一方地方の実情等を勘案するということになると客観性が失われる危険性が多分にあり、ここに政治的工作の余地が存し、不公平のよつて生ずる所以と思われる。
 一方では客観性を主張し、他方では主観や特殊事情を認める便宜主義を主張している答弁の内容は首尾一貫していないように思われるが、この点はどうか。

二、一歩を譲り、地方の実状を勘案する立場に立つて、藤原・鎧畑両ダムの補償基準を比較して見ると左記の如き差違が見出される。
 藤原ダム鎧畑ダム
一〇〇%約   七七%
一〇〇%約   八三%
山林一〇〇%約   五五%
原野一〇〇%約   六五%
同(萱収益分加算の場合)一〇〇%約   三九%
である。
 両地域のあらゆる実状が――東京よりの距離を除いては――全く類似しているのみならず、逆に山林は生育状況よりして、鎧畑の方がはるかに高く評価されるべきものと考えられるにもかかわらず、かかる差違が生ずるのは如何なる特殊事情の勘案によるものか、田・畑・山林・原野等各地目別に詳細に承りたい。

三、補償額の決定について「水没関係人と充分協議し、両者合意の上最終決定をする」とあるが、この協議は実際如何にして行われたか。
 当方の調査した鎧畑ダムにおける協議決定は、合意とは名ばかりで当局が一方的補償総額を各戸別に提示したばかりで、その算定の基準、内訳等は何等明示せず、然も訂正の交渉には応じられないというような事実が明白であるが、これは合意或は協議とは到底考えられない。
 また、交渉にあたつても「もうこれ以上は一文も出せない」「妥結を見ない場合は土地収用法の適用もやむなし」等高圧的な言辞で交渉をしたり、一方においては「まず調印しろ、価格訂正の場合は追加払いをする」等と切り崩しや壊柔を試み、更に水没者への厚意として、移転費用を銀行より融資斡旋し、交渉期間の長期化することにより、その利息額の負担の多くなることから、やむなく調印したという事例もあるが、これらも充分なる合意、協議とはみなされず、官尊民卑の風を利用した一方的な交渉と考えるがどうか。
 以上のような充分なる協議、合意によらなかつた場合、関係人の申入れをきき、再交渉に応ずべきものと思うが、この点はどうか。

四、答弁書によると「両ダムにおける水没者世帯別の補償金額には著しい差違は認められない」とあるが、この点できるだけ詳細、具体的に明示されたい。