質問主意書

第22回国会(特別会)

質問主意書


質問第五号

国土総合開発に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和三十年六月十日

田中 一      


       参議院議長 河井 彌八 殿




   国土総合開発に関する質問主意書

 国土総合開発の特定地域計画は総合開発計画の実施という見地から作成されているが、現在既に閣議決定をみた八特定地域計画総合開発事業については各省所管の予算によつて施行されているが、各省においては特定地域のみに重点を置いた予算執行が困難である関係上、特定地域内の事業の促進ということが充分に期待できないのが現状である。又予算的一面に限らず施策においても事業相互間の進度の不均衡のため著しく経済効果を減少させている等、総合開発の発展を阻止する原因をなしている。
 よつて政府に左の点につき回答を求める。

一、政府はこの際速かに総合開発関係の予算の統一を図り、合理的に調整するため国土総合開発法第十二条、第十三条の規定による相当額の調整費を計上して、項、目を明確にし、又計画施策の面においても更に合理的な改善を図るべきものと思考するが、この点について政府の基本的な意見を承りたい。

二、政府は各省の不均衡な(特定地域に重点的にできない)予算で今後総合開発の調整を如何なる方法で実施するのか意見を承りたい。

三、速かに総合開発実施のため地域毎に調整機関を設ける必要があると思うが、政府の意見を承りたい。

四、現在の電源開発会社を発展的に解消し、総合開発公社に改めこれを総合開発実施機関とする意思はないか。

五、総合開発の事業計画は昭和二十五年以降今日まで過去六ケ年間の実績にもさして見るべきものなく、且つ尨大な各省の計画の反面において各都道府県においては財政の窮乏から開発局、開発課等を廃して機構の改革を行おうとする時、経済審議庁においては開発部を新設しようとしている。この開発部が革新的な構想を持つものであるかと見ればさにあらず、まことに旧態然たるものである。只単に長期経済計画関係の業務の増大から国土総合開発関係を分離し開発部を設けるというのである。然るに業務の増大とはいうものの定員は機構改正前と改正後において比較してみても現状維持である。今ここに開発部設置が妥当でないことを明瞭にするため繰返して条項に示すと
1 各都道府県が開発局、開発課を廃して機構改革を行おうとしている。
2 開発部が革新的構想を持つものでなく旧態依然たる内容であるからには総合開発の推進は図れない。
3 定員において現状維持であるならば今更事新らしく開発部と銘打つて発足しようとすることは時宜に適していない。
以上の理由よりして更に開発部新設の問題を根本的に再検討すべきであると思うが如何。

六、最近通産省と経済審議庁では大体現在の経済審議庁を「経済科学企画庁」として科学技術行政も含む基本的企画とその総合性を行わせるということで構想もほぼまとまつたとされているが(朝日新聞六月九日付)、この点について御説明を承りたい。

七、衆議院商工委員会では内閣に科学技術庁を新設する構想を決議している。又通産省は技術は産業政策と結びつけて考えるべきものとの見解から別個に原子力を含めた技術行政機構を立案している現在、尚更経済審議庁の機構を慎重に研究し機構改革を行うべきであるにも拘らず、只単に長期経済計画の推進、調整、勧告等漠然たる字句の修正のみにて何をもつて業務が増大するといい得るのか。かような推進、調整、勧告等は従来この文句を修正するまでもなく当然行つてきたのではないか。或は又これらの字句を修正する以前においてはかような点に全く無関心であつたのか説明を承りたい。

八、経済審議庁設置法の改正はこのような末梢的な改正をしたところで何等意味をなさないと思う。この際更に根本的に再検討され新規な構想のもとに権限の強化を図り機構組織も幹部職員は他省との交流ではなく広く民間の有識者(財界、学界、経済界等)を充当し、内閣の改造と関係なく恒久的に不変の機構たらしめ、日本経済の企画の主体となる行政機関の骨子のもとに機構改革を行うべきものと思うが、御意見を承りたい。

九、以上の点からここに参考までに一県の実例を挙げておく。
     記
 該県は昨二十九年六月以降今日迄県独自の経費三千余万円を支出し、総合開発の推進に力を注いできたのであるが、鉄道、道路、農業、灌漑事業等何れも予定の事業費予算の配分なく、ために産業発展上重大な支障を来している現況である。就中隣県を結ぶ唯一の国道の整備事業を見るに、他方の県においては整備されているにもかかわらず、該県においては整備全く不充分で産業の発展振興を妨げているなどは、予算制度と施策の面において大なる欠陥が存在しているからではなかろうか。