質問主意書

第19回国会(常会)

質問主意書


質問第一三号

指揮権発動、外遊問題並びに乱闘国会の善後処置等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十九年六月十五日

八木 幸吉      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   指揮権発動、外遊問題並びに乱闘国会の善後処置等に関する質問主意書

指揮権発動の問題について

 加藤法務大臣は六月九日佐藤検事総長に対して「佐藤自由党幹事長の逮捕請求を延期させた犬養前法相の指示は第十九国会開会中を前提としたものであるから、国会閉会と同時に自然消滅するものである」旨の通知をしたとのことであるが、この問題はこれをもつて打切りとなつたのではなくして国民の心の奥底にも尚納得し得ないものがあるので、次の三点について政府の所見を伺いたい。

一 閣僚以上の重責たる与党幹事長が国会に対し収賄容疑をもつて逮捕許諾の申請をなされたという事実に対して何等責任を感じないかどうか。
二 吉田総理は基本的人権を尊重する建前から佐藤幹事長の場合逮捕せずして捜査は継続できるものと政府は考えるとの国会における答弁であるが、井本刑事局長は参議院議院運営委員会において涜職罪は身柄の拘束なくして取調は殆んど不可能と述べており、又加藤法相の指揮権発動中止声明に対し佐藤検事総長は適当な機会に逮捕できなかつたために捜査は極めて困難となつたと述べている。
 政府は指揮権の発動が捜査の困難を来したという事実を認めるかどうか。
三 指揮権発動に関する参議院の警告決議は事実上無視された。この事実を認めるかどうか。

戸塚建設大臣の長期欠勤について

 戸塚建設大臣は三月上旬から病気のため欠勤せられている。そのため国務の渋滞を来す惧あり、何故に速やかにその更迭を行わないのであるか。

次に総理の外遊問題について

一 総理は何のために外遊せられんとしたか、その目的如何。
二 外遊目的の発表を五月三十一日若しくは六月三日と国会の最終日を予定した理由如何。外遊の目的を逸早く発表して国会を通じて国民の希望を聞き、これを体して外遊するのが本筋と思うが如何。
三 外遊の突然の中止は諸外国に相当の影響を与えたものと思うが如何。更に諸外国に対して如何なる釈明をなしたか、これを詳細に承りたし。
四 総理の外遊は中止であるか、一時的延期であるか、延期であるとすれば今後出発の予定は何時頃であるか。

乱闘国会の善後処置について

 今回の衆議院における乱闘事件に関与した国会議員の責めらるべきは勿論であるが、かかる険悪なる政治情勢を馴致したる一半の責は政府が指揮権の発動並びにこれに関連する参議院警告決議の無視、外遊目的に関する答弁の拒否等一連の内閣の独善的態度にあると思うが、これを認めるかどうか。

延長国会の無効問題について

 六月四日以降の延長国会に対し社会党においてはこれを無効と主張しているが、六月七日に成立した警察法につき各都市において無効決議をしているところがある。万一本法無効の訴訟が提起せられ政府が敗訴となつた場合、その政治的責任は如何にしてとるか。
 政府は速やかに臨時国会を開いて各党出席の下に国会の運営を常道に戻し本法律をいささかの疑義も残さないよう成立せしめるの考えはないかどうか。