質問主意書

第19回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

漁業協同組合に対する課税上の疑義についての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十九年二月十日

青山 正一      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   漁業協同組合に対する課税上の疑義についての質問主意書

一、昭和二十八年十二月七日附国税庁長官通牒中、事業分量に応ずる分配金についての事項中、特別分配金の源泉となる剰余金の項は、水産業協同組合法により設立された漁業協同組合が、漁業自営を行つた場合、それによつて生じた剰余金を、事業分量に応じて配当するときは、事業分量に応ずる分配金に該当しないことにより、課税の対象となる様、一応解せられるけれども、水産業協同組合法並びに漁業法との関連において、重大なる疑義を生じ、当然改正せらるべきものと考えるのである。

(一)、水産業協同組合法との関係
 水産業協同組合法第八条には、「組合の所得のうち組合の事業を利用した割合又は組合の事業に従事した割合に応じて組合が配当した剰余金の金額に相当するものについては、当然組合には、租税を課さない」旨規定されており、同法第五十六条第二項には、剰余金の配当方法として「剰余金の配当は、定款の定めるところにより、出資組合にあつては年五分をこえない範囲内において、払込んだ出資額に応じてこれをし、なお剰余があるときは、組合事業の利用者にその事業の利用分量の割合に応じて(非出資組合にあつては、組合事業の利用者にその事業の利用分量の割合に応じて)これをしなければならない。」
 なおもしこの漁業自営により生じた剰余金を事業分量配当することが、事業分量配当とみなされない場合は、本法(水産業協同組合法)上、年五分の出資配当及び漁業自営事業以外の事業により生じた剰余金を、事業分量配当とするだけで、漁業自営により生じた剰余金は全然配当できないことにより、これを同法第十七条(協同組合における漁業自営)に反するのみならず、自営漁業協同組合の組合員は、漁業自営事業により生ずる剰余金の分配金を唯一の生活財源としており、この配当が許されないとすれば、全く生活の根拠を失う結果により、本法が零細漁民の生活向上のために定められた趣旨より見て、反つて権利を剥奪される結果となるのではないか。

(二)、漁業法との関係
(イ)、漁業法第十五条には、漁業の優先順位が定められており、これによれば、漁業協同組合における漁業自営が第一順位になつており又行政庁においては、漁業協同組合における漁業自営を強力に指導しており、漁業法の制定即ち漁業制度改革は、漁業協同組合の漁業自営を促進するために行われたものと解せられているのである。しかるに、課税上の取扱においてこれと矛盾するものあるは不当ではないか。
(ロ)、更に、漁業協同組合が、漁業自営を行うことは、これによつて、零細漁民が、資本漁業に対抗して、生活権を維持するためのものであり、漁業法が前記の如く、漁業協同組合の漁業自営に優先順位を与えた所以でなくてはならない。然るにこの漁業自営の剰余金に対して、もし営利法人の場合と同様の取扱を為すが如きは、零細漁民を窮地に逐うの結果となり不当の甚だしいものではないか。
 これを要するに、水産業協同組合法による漁業協同組合が、漁業自営を行う場合における課税問題の国税庁長官の通牒には疑義を生じ、多数の漁業自営をなす漁業協同組合に対し、不当の課税をなすなきを保し難いので、この際、かかる不当を一掃する適当の措置を採るべきものと考えるが、これに対する政府の所見を承りたい。