質問主意書

第19回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

米国対日援助費及び終戦処理費の処理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十八年十二月十日

一松 政二      


       参議院議長 河井 彌八 殿



   米国対日援助費及び終戦処理費の処理に関する質問主意書

 政府は約二十億ドルに達すると称せられる米国対日援助費をわが国の債務と認めている趣であるが、対日援助が、占領下わが国は何等の自主性を認められず、一方著しい社会不安の存在せる異常なる環境において行われたこと、又対日援助費に関する当初よりの経理事情(援助物資の受渡数量は日本側においてチエツクすることを許されず専ら米国側の通告によつて決定されてきたと伝えられる)、将又対日援助は米国国民及び米国政府の理解と好意によるものとして機会ある毎に挙国深甚なる感謝の意を表明し来つた事情を考えるとき、対日援助費を単なる債務と同様に取扱うことは極めて妥当性を欠くものと思う。一方わが国が七年の長期間に亘り支出した終戦処理費は実に総額約五千百億円(軍換算率により約四十七億ドル)に達し、敗戦の結果極度に疲弊したわが国経済の非常な重荷であつたことはわれわれの骨身に徹して体験したところである。
 これは、わが国がポツダム宣言受諾後一日も早く国家の自主性を回復して世界平和に寄与することを念願し、ポツダム宣言の誠実な履行に努力を重ねたにも拘らず、複雑なる国際情勢のため不幸にも講和が世界史上その例を見ない程甚しく遅延し、終戦後実に七年の歳月を要したことによるものである。
 従つて、わが国が如何んともなし難い理由により異常に長びいた占領のため巨額に達した終戦処理費の全額を、日本が負担するのは条理に合わないといわなければならない。且又、わが国が被占領国として負担すべき占領費は、日本における占領政策の実施に必要な経費に限定さるべきであつて、これと直接関係のない国連軍としての軍事施設及び軍事活動のための経費等は終戦処理費によつて賄わるべき性質のものでない。
 之を要するにかくの如き終戦処理費約四十七億ドルを全額わが国が負担し、更に又前述の如く単なる債務として認め難い約二十億ドルの対日援助費を弁済せんとするが如きは国民感情としても全く納得し難いところである。
 従つて対日援助費及び終戦処理費に関するかくの如き特殊事情に鑑み、対日援助費二十億ドルは尠くとも終戦処理費四十七億ドルと相殺されることとなるように処理することが国民感情を納得させる途であると思うが如何。
 又政府においてこれと見解を異にする場合その理由を問う。