質問主意書

第15回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質第一四号
  昭和二十八年三月十三日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員兼岩傳一君提出在日朝鮮人の強制送還に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員兼岩傳一君提出在日朝鮮人の強制送還に関する質問に対する答弁書

一、被収容者の名簿を公開し、事件に関係のない一般の人達にまで知らせることは、被収容者の人権を侵す虞が多分にあり、名簿は公表しない方がよいと考えている。

二、前述の通りこの措置は、被収容者の立場を考えるとき行政庁としては、当然の措置であつて、これを秘密主義と言うことは当らないと解する。

三、被収容者の処遇については、収容所職員に対して収容所開設以来機会あるごとに第一線の外交官としての態度と見識をもつて事に当るよう指導訓育するとともに、人権擁護の点について特に意を払つて収容所の秩序維持に万全を期しておる次第であつて、お尋ねの件については、被収容者の人権を擁護する建前から本人の親戚、知人等被収容者に有利な便宜供与のできる者については、収容所の保安上支障を来さない限り最大の面会の自由を与えており、且つ、今後もこの方針通り実施するつもりである。
 又収容所には、被収容者に貸与するため、冬衣、冬袴、冬シヤツ、冬袴下各二千着、夏衣上下各百着を備えており、衣類のない者にはそれを貸与している。そして日用品については、本人の自費で購入できない者に対しては、タオル、石鹸、歯ブラシ、チリ紙等を支給している実状である。
 従つて処遇上甚しき不当な取扱は絶対にない。

四、退去強制処分の実施については、既に国会において政府の方針を明らかにした通りであつて、政府としては、法令に基いて正当に行うつもりである。

五、在日朝鮮人は、すべて平和条約発効と同時に外国人となつたのであるから、出入国管理令及び外国人登録法の適用を除外することを考えていない。

六、現在大村収容所等に収容されている朝鮮人は、それぞれ適法な処分によつて収容しているのであるから、これらの人を直ちに放免する要がないと考えている。