質問主意書

第15回国会(特別会)

答弁書


答弁第八号

内閣参質第八号
  昭和二十七年十二月二日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員吉田法晴君提出通商産業省鉱山保安局長の炭労争議に介入する通牒に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉田法晴君提出通商産業省鉱山保安局長の炭労争議に介入する通牒に関する質問に対する答弁書

一 十月三十一日附通牒について

1 本通牒は、各鉱山保安監督部長に対し、争議中の保安監督の方針を指示したものであつて、重大災害の防止を主眼とするものであり、また監督指導の手段としては、極力経営者および労働者側の良識に訴え、自主的解決を促進する方法を指示し、鉱山保安法第二十五条により本来鉱山保安監督部長に存する保安監督上の命令権の発動についても、特に事前に通商産業省に打合せるべきことを指示し、事務処理の慎重を期したものであつて、本通牒をもつて争議に対する干渉とは考えていない。
2 鉱山保安法における「保安」とは、同法第三条に明記する通り、
(イ) 鉱山における人に対する危害の防止
(ロ) 鉱物資源の保護
(ハ) 鉱山の施設の保全
(ニ) 鉱害の防止
の四者が含まれ、これを綜合した看点から保安監督行政を実施しているものであり、本通牒が鉱山保安法制定の趣旨に反しているとは考えられない。

二 鉱山においては、鉱山保安法の規定する人命の安全保持施設の正常な機能を持続させることが、労調法第三十六条の実質的内容をなしこれに違反する行為を違法争議行為とする判決例があるが、本通牒が鉱山保安法第二十五条による命令権の発動につき、事前打合せを指示し、事務処理の慎重を期したものであることは前記の通りである。

三 本通牒の趣旨及び十一月七日附の事務次官口頭回答の趣旨については、十一月八日附通牒「十月三十一日附通牒に関するその後の経過について」により各鉱山保安監督部長に対し、これを伝えるとともに、十一月十一日開催の各監督部管理課長会議において、その趣旨を詳細に説明した。

四 保安委員会は、保安管理者(または鉱業権者)の保安に関する職務の執行に協力し、これに勧告を行うものであり、争議中の各鉱山における保安確保のための具体的対策を保安委員会の議に附し、委員の良識により自主的にその解決を図ることは誠に望ましいと考える。