質問主意書

第15回国会(特別会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質第二号
  昭和二十七年十一月十一日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員青山正一君提出韓国近海における本邦漁船の操業安全の確保についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員青山正一君提出の韓国近海における本邦漁船の操業安全の確保に関する質問に対する答弁書

 国連軍司令部広報局は、九月二十七日朝鮮水域に防衛海域を設定したこと、その目的、範囲、理由の説明および本制限措置実施の責任がクラーク大将により極東海軍司令官に委託されたこと等を発表した。
 これよりさき、九月二十六日在京米国大使館より外務省に対し、クラーク司令官が軍事上の必要から右制限区域設定を考慮中の旨内報があつたので、政府は、とりあえず在京米国大使館に対し、これが、わが国漁業に及ぼすべき影響の、きわめて大なる旨を説明し、右制限区域設定に当つては、十分わが方の利益を考慮に入れるよう関係軍当局に斡旋方依頼するとともに、二十九日あらためて書面をもつて本件措置の詳細を照会し、かつわが要望を申入れた。これに対する十月十四日在京米国大使館よりの回答により

(イ) 本海域管理に当つて、友好国又は中立国船舶の同海域の無害又は統制された通過に干渉することは国連海軍の意図でないが、陸海軍事行動が附近に行われる場合その必要上又は慎重な配慮として当該船舶の針路変更を行わしめることがあること。

(ロ) しかしながら、前記以外の船舶で同海域に立入り又は海域内において発見され、その存在が国連軍の陸海軍事行動の遂行を阻害する要素となると認められるものは、退去するよう警告されること。

(ハ) 四囲の状況から嫌疑をかけられる場合、あるいは頑強に反抗するがごとき極端な場合以外は、いかなる船舶も逮捕されることはないこと。

 の諸点が明らかにされ、かつ本措置は、敵性分子の侵入を防遏せんとする軍事的必要によるものであることが示された。
 政府としては、最も関心のある(1)わが国漁船が防衛海域内に出漁し得るや否や、(2)防衛海域内外において韓国側が不法行為を行わざるよう防止し得るや否やの二点に関し、在京米国大使館と種々交渉を重ねている次第である。なお、公海上に出漁中のわが国漁船に対する韓国艦船の不法だ捕、襲撃、りやく奪事件については、政府は、その都度韓国側に対して抗議を行い、その即時返還、損害賠償を要求してきたが、韓国側はこれに十分なる誠意を示さなかつた。のみならず、韓国大統領は本年一月十八日一方的にいわゆる李承晩ラインの宣言を発したが、わが方は、かかる宣言は国際社会に確立されている海洋自由の原則を根本的に破壊するのみならず、現在における国際漁業協力の基本観念とも全然相容れない措置であり到底承認されない旨、二度にわたり抗議した。
 なお、防衛海域と李承晩ラインとの間には何らの関係がないことは、在京米国大使館においても書面をもつて確認している。