質問主意書

第15回国会(特別会)

質問主意書


質問第一四号

在日朝鮮人の強制送還に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十八年三月二日

兼岩 傳一      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   在日朝鮮人の強制送還に関する質問主意書

 昨年第十三回国会において出入国管理令及び外国人登録法が審議されたさい、各議員から在日朝鮮人を韓国政権下に強制送還することは、国連憲章に反し、基本的な人権を蹂躙することであると主張され、私は強制送還された金氏が南朝鮮において直ちに死刑に処せられている事実を指摘し、軽々しく強制送還することは、政府が虐殺の援助をすることになると断じ、各党各派からも人道上の問題を生ぜしめないようにとの発言がなされ、政府もまた人道に反しないようにする点を繰返し答弁していることは速記録の上で明らかである。
 ところがその後の入国管理局の措置を見る時、きわめて重大な問題が生じており、当局の処置に関する政府の責任ある措置と答弁を求めるものである。

一、現在大村収容所及び鹿児島収容所に収容されている数百名の収容者の氏名及び収容の理由は、当然公開すべきであるにも拘らず、名簿の公開を拒否し、その理由として収容者の人権を擁護するため発表できないと入国管理局はいつている。このような理由は常識では理解納得することはできない。
 今まで公表しない根拠はいかなる所にあるのか。

二、われわれは名簿を即時公開すべきで、かかる秘密な措置は即時改めるべきであると考えるが、如何。

三、救援に出張した人々の報告によると、夏のランニングシヤツ一枚で厳寒をすごしているものや、はがき一枚すら買えないで知人や親戚に手続きの連絡もできないものなど皆地獄同然であると叫んでいたそうである。そればかりでなく、面会を要請したのに対し収容所としては上部の命令がなければ面会すらも許可しないと拒みつづけ、長時間収容所と折衝してやつと面会を許されているのである。
 鹿児島収容所の面会室に現われた朴南鎮外数名は、男泣きに泣きながら「私たちはどうでも良いから大村収容所や当収容所で苦しんでいる同胞を至急救援してくれ」と悲痛な叫びをあげていたことも報告されている。
 右の各件について政府はいかなる見解を有するか。この非を認め、直ちに適切なる措置をとられるかどうか。

四、両法令通過後すでに朴用学、金三用、李相浩等は政治的見解を異にしている韓国に強制送還されており、更に品川の黄仁杓の場合は日本で生れ、日本の学校を卒業し、日本の生活に溶けこんでいる人であるが、登録法違反者として、強制退去令状一枚で、戦乱の真只中に追放されようとしており、このような事実はその外にも次々と起つているのである。
 われわれは本人の希望しない政権の下に強制送還することは、国連憲章に反するのみでなく、基本的人権の侵害も甚だしいものであるから、国際法にのつとり、本人の希望しない政権の下への強制送還を中止すべきであると考えるが、政府の見解は如何。

五、一九四五年九月二日以前より居住している在日朝鮮人は日本国民と同様に扱い、出入国管理令及び外国人登録法の適用を除外し、現在激化している不安を除くべきであると考えるが如何。

六、右の見地に立つて現在大村及び鹿児島収容所等にいる朝鮮人は即時釈放し、各自の家庭に復帰させ、職業を与えるような援助をすべきであると考えるが、政府の見解如何。