質問主意書

第15回国会(特別会)

質問主意書


質問第九号

戦傷病者及び戦没者遺族についての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十七年十二月三日

片岡 文重      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   戦傷病者及び戦没者遺族についての質問主意書

 終戦後ここに七年有余、戦争の最大犠牲者である戦傷病者や戦没者遺族に対して、満足な国家保障もせずかつ具体的な職業対策もなく今やこれらの人々は憲法の保障する基本的人権の侵害はおろか生存権すら脅威されている現況にある。
 よつて左記諸点に対する政府の所見並びにその対策を詳細にかつ具体的に明示されたい。

一、政府はあらゆる施策に優先し、戦傷病者や戦没者遺族の生活の安定に努力すべきであると考えるが、戦後既に七年有余未だこれらの人々に対する満足な国家保障もせず、具体的な職業対策も行うことなく、生活環境に恵まれないこれら不幸な人達は、明日の生活はおろか今日の生活さえ支えられぬどん底生活にあえいでいるが、政府は完全な国家保障法の制定と身体障害者強制雇傭法を実施する意思ありや、ありとすればその具体案を詳細に示されたい。

二、昭和二十一年二月一日発令のポツダム宣言受諾に伴う恩給法特例の勅令第六十八号は、昭和二十六年五月一日一部改正されたが、今後その傷病恩給の階級差を短縮し、症状等差による支給範囲を改正し、支給金額を増減する意思ありやいかん、もしありとすればその具体案を詳細に示されたい。

三、戦傷病者戦没者遺族等援護法の障害年金支給については、軍属や学徒挺身隊員等に対し、戦地の範囲と受傷原因について制限規定が設けられたのみならず在職期間に関する規定は極めて実際に即していない。これが制限を緩和拡張すべきであると思うが、政府の所見いかん。
1 昭和十六年十二月七日以前の受傷者に傷害年金を支給する要ありと思うが、改正する意思なきや。
2 軍属の傷害年金については、軍人と同様にすべきであると思うが、改正する意思なきや。
3 戦地についての指定期間外の者でも公務に基因して受傷した者は、その資格を認むべきが妥当と思うが、政府の所見いかん。
4 政府は戦傷病者戦没者遺族等援護法は暫定的なものであると明言しているが、効力を失する期限を示されたい。

四、政府は恩給法特例審議会の答申案に基き傷病恩給を改正し、七項症以下を一時金で打切るということが伝えられているが、七項症以下のものでも身体障害の程度が極めて重いものについては救済する必要があると考える。これに関する政府の所見を問う。

五、日本政府の至上命令により、今次大戦に従軍し受傷した元朝鮮出身の傷い軍人、軍属は日本国の独立とともに自動的に韓国人に編入されたが、韓国代表部では「貴殿達の生活の保障は当然日本政府が負うべきである」として全く省みられていない。これらの韓国人に対する政府の保護対策いかん。

六、戦後七年有余未だに跡を断たない傷い軍人軍属の白衣募金については、放置するを許されない緊急解決を要する問題と思うが、これが対策としては名目的、形式的の方策では根本的解決は得られない。須らく真に困る者を救済するという実質的実体主義の方策を採らねばならぬと思うが、これに対する政府の所見いかん。