第13回国会(常会)
答弁書第六号 内閣参質第六号 昭和二十七年四月二十二日 内閣総理大臣 吉田 茂 参議院議長 佐藤 尚武 殿 参議院議員千田正君提出在外資産の調査並びにこれが対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員千田正君提出在外資産の調査並びにこれが対策に関する質問に対する答弁書 一 在外財産については、連合国最高司令官の要請に基き昭和二十年大蔵省令第九五号をもつて引揚者等より報告を徴し、他方、企業財産につき在外財産調査会を設けて該当会社から報告書を徴したのであるが、 (一) 省令第九五号に基く報告書は、終戦時時価を原則とすることとしたにも拘らず、証拠書類の添附を求めなかつたので、財産の評価の基準、方法等が区々であり、その調整が困難であること。 (二) いわゆる積極財産の調査を主眼としたため、負債関係が明確でないこと。 (三) 現実に提出された報告書は、約四八万通で引揚者数から推定して過少と考えられること。 (四) 同省令は、昭和二十五年六月三十日をもつて廃止せられたため、その後の引揚者からは報告を徴していないこと。 (五) 在外財産調査会による調査においても、調査対象が網ら的でないこと。 等のため在外財産の計数としては信ぴよう性に限界があるから、その公式発表は差し控えたい。 二 在外財産の実体を正確に把握するためには、改めて引揚者等から個別的に報告を求めるか関係国の協力を求める外はないが、 (一) 引揚者等からの報告に証拠書類の添附を求めることは無理であつて、正確な調査の目的を達し得るか否かは疑問であること。 (二) 関係国に対して協力を求めるとしても現実には、在外財産の約九五パーセントは、旧満洲国を含む中国及び、朝鮮、台湾、樺太等にあり、ことに中国と朝鮮及び樺太の比重がその九〇パーセントを占めていると考えられるので、調査の実効を期することは絶望に近いこと。 三 平和条約第一四条の規定に基き連合国によつて留置清算される在外財産及び第一六条の規定に従つて赤十字国際委員会に引き渡される在外財産に関する国内措置の問題については、戦争を基因とする他の損害との権衡、財政負担能力等とも関連する問題であるので大蔵省を主として、関係各省において鋭意研究中である。 |