質問主意書

第13回国会(常会)

質問主意書


質問第六号

在外資産の調査並びにこれが対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十七年四月十日

千田 正      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   在外資産の調査並びにこれが対策に関する質問主意書

 在外資産の調査に関しては、吉田総理大臣はかつて「在外資産の調査については未だその内容を発表し得る段階に達していない……」と回答している。(昭和二十四年五月二日北條議員の質問主意書に対する答弁書)爾来二年半を経過しこの間平和条約は締結され、在外資産の処理条項を受諾し、今や条約発効を間近かに控えている際、政府が在外資産の内容について未だに何等の発表を行つていないことは怠慢も甚だしい。
 また第十二国会において平和条約審議に当り、池田大蔵大臣は「在外財産の補償は相当困難である。こういう気持を持つておりますが、いろんな調査をいたしまして払えるか払えぬか、今少しく検討してみたいと思つております」(昭和二十六年十月二十九日参議院特別委員会)と述べ、吉田総理大臣は十一月十四日同委員会において「……併しながらこの賠償に当てられる私有財産の補償をどうするかということは、予算の関係もありまして希望としては補償はいたしたいと思いますが、併しながら予算の関係或は国力の関係もありますから、これはどのくらいの金額に達するか、或は日本の国力がどうであるかというすべての観点からして見なければ、政府の態度はきめられないと思います」と所信を述べている。更に西村政府委員は十月三十一日の同委員会において「在外邦人資産の調査をしたかどうかという問題でございます。この点は終戦後日本政府とスキツプと合同して調査いたしたものがございます。……最も一般人の関心の的となつております個人財産については、殆んど確かめる手段がないのでございますので、その調査の結果について自信を持てない性質のものでございます」と述べている。
 在外資産は主として所謂引揚者の永年に亘る努力の結晶であつて、外地経済の発展と日本国富の蓄積とに大きな貢献をなして来たものである。然も政府は引揚当時進駐軍の命により引揚者の経費負担において在外資産の報告をなさしめたのである。従て万一これらの在外資産が今日有耶無耶の中に葬り去られることがあつては、国家の道義は全く地におちるものと云はねばならない。よつてこの際政府が在外資産の実態を明らかにすることは、外交上の資料としてもまた日本の経済文化上更に将来国民の海外進出上の資料としても重要であるので、政府は緊急に在外資産の調査を実施すべきであるし、またその対策を確立すべきである。左記諸点につき具体的に政府の方針を伺いたい。

一、終戦後実施した在外資産調査の結果を明らかにすること。

二、在外資産の総合的調査を実施すべきであるが、それについての方針。

三、在外資産対策について何処で研究をし、何日ごろ対策を確定するか。