質問主意書

第12回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質第二号
  昭和二十六年十一月十日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員青山正一君提出漁業経営合理化の促進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員青山正一君提出漁業経営合理化の促進に関する質問に対する答弁書

一、漁業効率増進に必要な機械類設備の助成

 漁船用各種科学機器については従来より政府の助成指導により相当の普及をみ、漁業経営に進歩と便益をもたらしているが、なおその施設の要望は年とともに盛なるものがある。一方これら機器の取扱いについては主要漁業根拠地において取扱講習会を開催し、漁業経営の合理を図りつつあるが、現在具体的助成については漁業無線陸上局の新設に対し、設備費の二分の一以内の国庫補助を行つており、本年度においても六箇所を新設中である。
 その他無線設備、魚群探知機等についても助成の途を考慮し、実現可能の方途を研究中であるが、資金の枠等の関係から思うように取り運ばない現状である。

二、合成繊維漁網綱使用の助成

 合成繊維漁網綱への転換は、漁業経営の合理化並びに外貨資金の節減に寄与することが甚大であるので左記の如き処理ができるよう目下努力中である。

        記

 合成繊維漁網綱への転換を急速に実施するため転換五ケ年計画を樹立し、二十七年度においては次の計画で実施する。
1.漁業権証券の資金化及び農林中金よりの融資によつてその資金をまかなう。
2.転換を迅速確実に実施するため国及び地方庁で実施試験を行うこととし、必要な予算措置を執る。

三、魚類運賃の低減

 魚類の鉄道運賃の低減については、御趣旨もつともと考えられ既にいわし、にしん、さんま、いか、さば、たら等の所謂大衆向の魚類については従来の六級を一級下げて七級としている。また、今回の運賃改訂に際し、長距離にわたり運送される場合の措置を従前七五一キロ以上のもの所定賃率の五分減であつたものを、五〇一キロ以上のものとして負担の軽減を図つたが、水産物の特殊性よりしてなお一層の負担の低減並びに輸送サービスの改善を図りたい。

四、漁船用燃油価格の引下

 昭和二十五年十二月、昭和二十六年四月に、原油精製を価格構成の基礎として価格改訂が行われたが、その後民貿重油の買付にともない価格改訂の要が起つたのでこれについては民貿重油とガリオア輸入石油類との価格調整の措置をとつた。この価格調整が九月八日で打切りになつたために製品輸入を必要とする重軽油については製品輸入を阻害しないよう価格調整措置の要が生じて来ているが、御趣旨の通り燃油価格の高騰が漁業経営にもたらす影響は少なからざるものがあるので諸般の事情を考慮の上充分な措置を執りたいと考えている。

五、漁船保険料の軽減

 現行漁船保険制度は独立採算を建前とするために、保険料が高く、従つて加入も極めて低調である。よつて特に保険加入に難点の多い小型漁船に対し、漁業協同組合を単位とする当然加入制を布き、社会保険の性格を附与し、保険料等の一部国庫負担により漁船保険の画期的普及促進を図るべく、目下漁船損害補償制度要綱を立案し、二十七年度より実施するべく考究を進めている。