質問主意書

第10回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

漁船船員の歩合金に対する課税の適正化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十五年十二月十五日

松浦 清一      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   漁船船員の歩合金に対する課税の適正化に関する質問主意書

 漁船船員の収入の多くの部分を占めている歩合金に対する現行所得税法の適用は著しく公正を欠き不合理極まる苛酷なものであるから速やかにこれを改正し合理妥当な課税の基準を定めるべきであると考えるが、これに対する政府の方針を質問する。
質問の理由
 漁船船員の収入は、その生活を維持するための固定賃金は極めて低額であり、歩合金が多くの部分を占めているのが通例である。その歩合金を得るために漁船船員は陸上一般勤労者の想像も及ばぬ長時間の労働に服しており、また作業の性質上労働に要する被服類等も比較にならぬ程多量の消耗を余儀なくされ、且つその労働が危険な海上の狭小なる船内においてなされるのであるから労働力再生産のためにも過重な負担をさけることができないのみならず、一日十七、八時間に及ぶ長労働と荒波に魚群を追つて寸刻を争う激甚な重労働とは必然的に堪労力と生命とを磨滅短縮せしめるのである。
 従つて、このようにして得られた歩合金は一般勤労者の所得とは著しくその性質を異にしているのである。
 即ち漁船船員の収入の多くの部分を占める歩合金は、第一に自己及び家族の生活を維持するために費され、第二に作業に欠くべからざる労需物資購入のために費され、第三に短期間に労働能力を消耗するため将来の生活保障に必要な蓄積もまたその間になされなければならないので、そのための支出がある。したがつて一日八時間働き、一週間に一日の休養を為し、生涯の大部分を一定の勤労に終始し得る一般勤労者の収入に対する課税と、漁船という極めて特殊な環境にある船員の収入に対する課税とが同率になされることは不合理であり、不当なものであることが明瞭である。
 以上の諸理由によつて本員は次のような見解をもつているが、政府の所見を承わりたい。

一、歩合金に対しては、勤労控除の外に、作業費等の名目による一定の基礎控除を認めて漁船船員の労働生活上避くべからざる負担を充分考慮すること。

二、歩合金は漁獲の多寡によつて決定されるため極めて変動が多いのであるから、これを変動所得として五ケ年程度の平均額で課税対象とし労働生活に要する支出を充分に基礎控除されるよう措置すること。