質問主意書

第9回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質第二号
  昭和二十五年十二月五日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員青山正一君提出水産基本政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員青山正一君提出水産基本政策に関する質問に対する答弁書

一、水産省の設置について

 水産省の設置は、業界年来の要望であるが、内外諸般の情勢に鑑み、その実施の時期及び方法については、慎重に考慮すべきものがあると考える。

二、水産資源の保護育成について

(一) 沿岸漁業殊に底魚類について水産資源の枯渇の傾向が認められるが、現在の状況は、漁業許可違反船及び無許可船が相当数に上つており、漁業取締が混乱しているので、まず正規許可船の整理に入る前の措置として、一応漁業秩序を正常の形に戻す必要があり、このため、小型機船底びき網漁業処理要綱を作成し、目下各方面の意見を徴して具体的対策を考究中である。
(二) 水産資源の調査が未だ不徹底である点は、水産研究所の創設以来日なお浅く、施設、人員等未整理の状態にあるためであり、その整備充実に今後とも格段の努力をする所存である。
(三) 稚魚の採捕制限については、現在主として地方の漁業取締規則によつて実施されているが、必ずしも徹底していないうらみがある。今後は、科学的試験研究の結果を、新しい漁業調整機構による漁民の協力体制の整備と相まつて普及し、資源愛護の精神を高揚するとともに、取締の強化を促進したい。
(四) 荒廃漁場の復旧については、その必要の急務であることを認め、予算化について鋭意努力したが、実現にいたらなかつた。今後の実現を期している次第である。

三、旋網漁業許可方針の確立について

(一) 一部の旋網漁業については、近時その多角的操業に伴つて機動性を増強し、個々の都道府県の行政管轄に委せられない面もあるが、全国一律にかかる状態にあるわけではないので、各海区のそれぞれの特殊事情を検討の上、大海区にまたがつて総合調整を必要とし、またそれが行政上適当と考えられる地域及び漁業種類について、個々に調整方式を樹立するのが妥当と考える。
(二) 主意書の意見は有力な意見と考えられるが、なお、旋網漁業の特殊性、他の漁業との調整、地方自治権伸長との関係その他諸般の事情を検討した上考慮すべきものと考える。
(三) いわし資源の決定的減少、資材面の制約、漁業制度改革の進行に対する影響等の諸条件からみて、許可統数の急増は、ぜひとも抑制しなければならないので、本年四月関係都道府県に対してその制限方を依頼したが、なお不充分な面もあるので、法制化を研究中である。

四、漁船船員法の制定について

 現在漁業に対しても適用されている諸種の労働法規が、一般の陸上産業或いは海上運輸業を基準として制定されているため、これを特殊な生産労働である漁業に適用すると漁業生産又は漁業労働の保護に適当でなく、種々の摩擦をひきおこし、ぜひとも労働法規の適正な改正乃至別途の独立法の制定が根本的に必要であると考える。
 しかしながら、このためには、漁業の各部門における経営及び労働の実態把握が前提であり、広範囲な資料の収集と科学的調査が必要であり、着々これを実施してゆく方針である。