質問主意書

第9回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

水産基本政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十五年十一月二十四日

青山 正一      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   水産基本政策に関する質問主意書

一 水産省の設置について

(一) 水産行政は、現在、農林省の外局たる水産庁の運営する所であるが、主管大臣は農林行政に忙殺せられ、水産行政に専念し得ない実情である。
(二) 領土の縮少せられた我が国としては、海洋資源の開発、水産業の発展に依存することが益々大であるから、水産行政の活発な運営に期待しなければならぬ。
(三) 政府は、行政簡素化のため、重大な機構改革を企図して居り、農林建設両省を統合して、天然資源省の如きものを創設せんと伝えられて居るが、単に、水産庁をそのまま、かかる尨大な新機構の外局として移管するが如きは、水産行政を軽視するものであり又行政簡素化の趣旨に反するものである。この際、水産省を新設し、強力な水産行政の推進を為すべきであると考える。
 内閣総理大臣の本件に関する所見を承わりたい。

二 水産資源の保護育成について

(一) 最近各地方に見られる漁業不振の根本原因は、水産資源の枯渇荒廃に帰すべきものが多いが、これに対して未だ強力な施策が見られない。さきに、水産資源枯渇防止法が制定せられたが、西部底曳網漁業の整理が断行せられた以外に現実の施策として見るべきものがない。
(二) 現在、水産資源に関しては、水産研究所その他の機関において調査が実施せられて居ないのではないか、経費の節約から甚だ姑息不徹底である。
(三) 稚魚の濫獲を防止することは、水産資源の保護育成上、極めて重要であるにかかわらず、未だ有効適切な措置が講ぜられて居ない。
(四) 暴風雨による漁場の荒廃、沈没船、墜落機体その他の海底の沈下物等に因る操業不能となつた漁場を速かに復旧することは、現下の漁業不振を緩和し又水産資源の保護育成に資する急務である。
 これらの諸問題を如何に処理せられんとするか、政府の見解を承わりたい。

三 旋網漁業許可方針の確立について

(一) 旋網漁業は、沿岸漁業から沖合漁業に転化しつつあるにかかわらず、現行制度の上では、一律に都道府県知事の権限に属せしめられて居るため、数府県に渉つて、一々許可を受くるを要し、一面煩雑な手続を課し、他面許可乱立を見るが如きは、漁政上放任し得ないことである。
(二) 十五トン以上の漁船を使用するものは、農林大臣の許可とし、その漁場は房総半島の突端から釧路海区マツカーサーラインまで又は青森県に至るまでを単一の海区とすべきである。
(三) 右の漁業許可については、原則として、都道府県が現有する総数以上に増加してはならない。
 本件は、既に関係当局において考究中であると信ずるが、速かに方針を確立するの意思はないか、政府の所見を承わりたい。

四 漁船法の制定について

(一) 漁船船員は、商船船員と就業事情を異にして居るにかかわらず、後者を主眼とせる法制に規律せられて居ることは不合理である。
(二) 三十トン以上の漁船には船員法及び労働基準法が適用せられて居るのであるが、例えば、旋網漁業において四・五隻の漁船が集団となり同一作業に従事するにかかわらず、三十トン以上のものだけが両法の適用を受け、他の三十トン以下のものに適用がないというが如き不合理の甚だしいものである。
 以上の理由から、速やかに漁船船員を対象とした別個の船員法を制定すべきであると信ずるが、政府のこれに関する所見を承わりたい。