質問主意書

第7回国会(常会)

答弁書


答弁書第五六号

内閣参質第四六号
  昭和二十五年五月二日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員池田恒雄君提出所得税徴収に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員池田恒雄君提出の所得税徴収に関する質問に対する答弁書

一 1 「お知らせ」の課税見込所得金額より低い申告をした場合においても、その申告に相当の理由がある場合においては、更正決定を行つていない。従つて追徴税は徴収していない。
2 自己に正確な記録がある場合は、その記録に基いた正しい計算と「お知らせ」による所得金額と比較対照ができ得ると考えられる。
3 「お知らせ」はその時までの調査による税務署の一応の目安を示したものがあるからそれと同額の所得金額を申告した場合であつても、その後調査の結果所得金額が相当増加していることが判明した場合には当然再更正を行うことになつている。
4 申告の目安として、単に計算の方法や基準を示しても、個々の納税者に所得の計算ができなかつたり又は適正な申告が提出されない場合が多いと考えられる。
5 所得調査の方法は、原則として実地調査を行つている帳簿の備付がなく実地調査が不可能なもの及び帳簿の備付があつてもその記載事項が適正でないと考えられるものについては、類推調査を行つている。
 類推調査の方法としては、店舗の位置、状況、従業員数、取引の状況、生産の状況及び販売の状況等を総合し更に同業者との権衡等を勘案している。
6 税務官署において各業種における実地調査を実施した結果については、大多数の人について昭和二十四年分は昭和二十三年分の課税の対象となつた所得金額に比較して増加している。
7 5と同様である。

二 1 目安として示したものである。従つて稼働しない事実があれば必ずしもその目安によらなくても差支えない。なお、農家の副業であつても農業に家族が従事しており本人は大工、左官等に専ら従事している場合は、特に一般事業の業者と区別する必要はない。
2 副業所得を総合した結果、経営規模は同じであるが副業所得のない他の農家と比較して納税額が増加することはやむを得ないと考える。
3 減収の結果、その農家全体の所得が減少した事実が証明できる場合は、その減収を加味した申告をすることに差しつかえない。
4 督促又は滞納処分に的しての税務署員の言動については特に慎重を期して過誤なきよう機会あるごとに国税局員及税務署に対し注意をしており、最近においては相当改善されたと考えているが今後においても更に努力したい。

三 1、2及び3 実際所得と認められない低い確定申告を提出した者に対し、更正決定を行う前に修正する機会を与えたものである。なお、納税者が税務署の示した所得金額により修正申告をなした後において、その修正申告の所得金額が自己の実際所得金額と違つていることを発見した場合は、その修正申告について更生の請求ができることになつている。
4 更生決定をなした後において、更正決定をなした所得金額以上に所得のある場合においては、再更正をなすことができるのであるから、納税者に対し再更正前に修正申告をしようようすることは差しつかえない。
5 確定申告に対する増加修正確定申告の提出期限については、一日以内という規定はなく会計に規定されている時効期間内であれば、いつでも提出して差しつかえない。なお、修正申告を指導しているのは、納税者の負担を最少限度に止めたいという趣旨に外ならない。
6 短期間内に更正決定の通知をなさなければならないことにより、更正決定通知書に更正決定の内容を詳記することは不可能である。
7 二1と同様である。