質問主意書

第7回国会(常会)

答弁書


答弁書第三六号

内閣参質第二〇号
  昭和二十五年二月十八日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員市來乙彦君提出講和に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員市來乙彦君提出講和に関する質問に対する答弁書

 単独講和の成立後において、この講和条約に参加しない戦勝国とわが国との間には、依然として戦争状態が存在する。しかしながら、

(一) 戦争状態の存続と敵対行動とは別問題であつて、戦争状態が存続するからといつて、戦勝国はいつでも再び敵対行動を開始する自由を有するものではない。わが国が降伏文書に調印し連合国がこれを承認して敵対行動の終止が行われてから多大の年月を経過した後において、またある戦勝国とわが国との間には講和によつて平常関係が恢復された後において、他の戦勝国が理論上の戦争状態の存在を口実として新たに日本の占領を企図するというようなことは、国際連合が存在し戦勝国がその加盟国となつている今日、あり得べからざることであり、仮りにこのような企図を試みようとしても、国際連合及び他の戦勝国はこれを黙視しないであろうと考えられる。

(二) (一)において質問せられたような事態は発生し得ないのであるから、「占領政策として諸種の指令を強制する」というようなことはあり得ない。わが国に対して指令を発出し得るのは、連合国最高司令官のみである。
 上述のような次第で、政府としては、連合国の公正と信義とに信頼して、実際上あり得ないような場合に対して対策を講ずる必要を認めていない。