質問主意書

第7回国会(常会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質第一〇号
  昭和二十五年二月七日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員池田恒雄君提出地方別農業計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員池田恒雄君提出地方別農業計画に関する質問に対する答弁書

一、昭和二十五年度水稲に関する農業計画樹立に当つては肥料事情の好転もあり、水稲の生産は大体に於て戦前の水準に復元しているものと考えられるので、全国生産量をほぼ前年生産量と同じ程度にこれをおさえたが、地方別の最近の生産事情を考慮してこれを決定した。
 水稲に於ける地方別対策としては、北海道に於ける温床苗代設置奨励施設、東北、北陸等水稲単作地帯に於ける保温折衷苗代設置奨励施設及び緑肥採種圃設置施設等がその主なるものであるが、これらの地帯にあつては右の諸施設により稲作の安全性が著しく高められるものと期待される。
昭和二十五年度地方別水稲生産計画(別表)(省略)

二、陸稲、雑穀の生産量については、畑作物としての藷類その他の作物との競合をも考慮し、陸稲については県の計画面積をとり、また雑穀については、生産量は戦前に復元しつつあるとはいえその復元率はまだまだ低いし、藷類の一部転換も考慮せられるから尚一層増産の余地が残されているのではないかと思われるので相当の増産を計画した。
 雑穀の生産増強については、特に優良種苗の供給確保が必要と思われるので、主として玉蜀黍の主要生産地帯に対し優良種苗確保の為の原種圃の設置を計画中である。
 尚、米、雑穀についての一般的増産対策としては、肥料、農機具、農薬等生産資材の確保、土地改良、栽培技術の指導普及等各方面より綜合的に検討の上適切に実施をはかつている。
1 昭和二十五年度陸稲地方別生産計画(別表)(省略)
2 昭和二十五年度雑穀地方別生産計画(別表)(省略)

三、食糧確保臨時措置法第三条第一項の規定に基く農林大臣の指定する雑穀とは、昭和二十三年九月十五日附農林省告示第一九九号を以て明示した大豆他十五品目(小豆、えんど、いんげん、そらまめ、ささげ、緑豆、そば、燕豆、ライ麦、粟、ひえ、きび、もろこし、とうもろこし、落花生)であるが、同法第四条第二項の規定に基き右以外の雑穀につき知事がその農業計画を指示することができることになつている。
 知事が右の指定をなすのは、当該都道府県の食糧の生産需給上特に必要と認めた場合農林大臣の承認を受けて指定するものであつて、現在迄全国的に適用の例はない。
1 雑穀(春夏作)生産消長(別表)(省略)
2 イ、昭和二十四年産雑穀地方別作付反別生産数量(別表)(省略)
ロ、昭和二十四年雑穀生産農家戸数(別表)(省略)
3 雑穀の地方別生産技術と政府の試験研究とその普及

(一) 玉蜀黍
 雑種強勢を利用する研究が、農林省長野農事改良実験所桔梗ケ原試験地を中心に農林省札幌試験地及び農林省熊本農事改良実験所阿蘇試験地等で着々と成果をあげ、既に子実生産を目標とする組合せの検定もできてその結果優秀な組合せについてはこれが必要な種子生産の原種並びに採種圃計画に移している。
 尚青刈エンシレージ用の雑種組合せの検定は目下続行中である。
(二) 大豆その他豆類
(1) 品種
 優良品種の選定は最も重要でこれに集中し育成中であるが、近く農林省石岡農事改良実験所、熊本農事改良実験所阿蘇試験地より優良品種が出る予定である。農林省大館農事改良実験所からは「農林四号」及び「農林五号」が昭和二十三年に育成され目下普及中である。又農林省佐賀農事改良実験所では夏大豆及び蚕豆、農林省鈴鹿農事改良実験所では落花生の品種改良を開始している。
(2) 害虫防除
 B・H・C、D・D・Tの有効なことを検定したので、これを普及に移しつつある。
(3) 根瘤菌
 大豆根瘤菌の人工培養並に配布は従来より実施中であるが、更に優良系統菌の発見に努力中である。
4 雑穀の地方別利用状況
 国内産雑穀の地方別農家の利用状況を食糧管理台帳に基いて見れば別紙の通りである。尚、管理台帳は市町村長が生産者に指示した割当数量に基いて、記帳されたものであるから、実態とは若干の相違があると思料される。府県別数量中、雑穀が飼料に計上されていない県があるが、右は県に於て割当の際、特に飼料として数量を算定指示しなかつたものと考えられる。
5 雑穀の地方別供出と保有の状況
 米及び雑穀の供出は無制限に代替が許されているので、農業計画の指示に当つては、夫々の保有並びに、供出数量を綜合的に一本で指示することになつているので、農業計画中、米雑穀の保有供出数量を分割することは困難であるが、生産数量はこれが算出の基礎となる米雑穀別数量が明らかになつているので、この生産数量と買入実績とを対比して保有の状況を推察することはできる。昭和二十三年度についてこの関係を見れば別表(省略)の通りである。

四、雑穀一般に対する統制は、国内食糧の需給状況よりみて今後継続の要があると考えられるが、雑穀の指定品目中には、尚、その統制の方式につき検討すべきものがあるので、鋭意研究中である。