第7回国会(常会)
答弁書第八号 内閣参甲第一七二号 昭和二十四年十二月二十七日 内閣総理大臣 吉田 茂 参議院議長 佐藤 尚武 殿 参議院議員北條秀一君提出開拓行政に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員北條秀一君提出開拓行政に関する質問に対する答弁書 一、入植戸数及び離脱戸数
離脱理由 開拓地営農資金の不足、営農物資の入手難、入植地の瘠薄又は経営面積の狭少等、営農経営の見透し困難に基因するものがあり、又入植者の開拓営農の意志薄弱又は身体の虚弱のため、開拓営農が継続不能となるものがみられ、なお生計の不安、世帯主の死亡等家庭事情のため落伍するものがその多数を占めている。しかし終戦直後の混乱期に入植した商工業の転失業者、失業軍人、その他疎開者等集団帰農者中には農業の経験なく加うるに意志薄弱等のため離脱するものが多かつたが、昭和二十二年度以降厳格な選衡を経て入植した者には離脱者は激減している。 二、三反乃至五反歩の小面積を割当てられた入植者は、終戦前後に実施された集団帰農者の中に幾分あると思われるが、これに対しては地区の拡張(追加買収或は管理替のできる場合)及び離脱者(入植者の再確認の実施により不適格者として排除される者を含む)の土地再配分等によつて割当面積の拡張を図るとともに、副業又は農村工業の導入、中小家畜の導入、経営の集約化等、営農指導を強化して、農家経済の安定化を図る措置を講じつつある。 三、世情農地改革を打切るが如き風聞があるが、政府としては、去る十月二十一日の連合軍最高司令官より発せられた首相宛書翰の趣旨に沿つて、改革を徹底的に遂行する方針を堅持してをり、未墾地買収についても従来同様開拓可能な適地については、法の定める所によつて、買収を続行する。 四、住宅の不足については、かねてこれが対策に腐心しており、明年度以降三ケ年間にこれを解消したい計画で予算計上に努力したが、遂に実現できなかつたので昭和二十六年度予算には是非計上するよう一段と努力する考えである。 五、開拓者資金融通法が制定せられた当時は、開拓者の入植と同時に各戸平均一万円の営農資金を貸付けることとして、実施してきたが開拓地農業経営の特殊事情と経済事態の変転に即応するため、昭和二十三年三月の物価を基準として開拓者一戸当り全国平均六四、〇〇〇円を三ケ年に分割して融通することとし、その後の年度においては物価によつてこれをスライドし且つその年度の国家財政をも考慮して実際額を決定するという原則をたてて目下この基本線によつて融資を行つている。 この融資額の算定は、全国開拓地の一戸平均耕地二町五反の経営費を基礎としたもので、融資を三ケ年に限定したのは右の経営では入植から三ケ年が所謂赤字経営の期間でその間の欠損部分を営農資金で補うことを目途としたのである。もとよりこれをもつて充分とは断定できないが経営の合理化等開拓者の創意工夫と努力によつて開拓営農の基礎を確立し得るものと期待している次第である。 なお、開拓者資金の中住宅資金については、公共事業費の住宅補助金が増加せられたので二十三年度から融資を実施していない。 |