質問主意書

第7回国会(常会)

質問主意書


質問第五五号

開拓農業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十五年四月四日

田中 利勝      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   開拓農業に関する質問主意書

 政府が終戦後緊急開拓事業を取上げて以来、その方針は、再転又三転して、一貫した方針が認められない。当初は、食糧増産と失業対策を目的として出発したが、幾千もなく土地利用の高度化と人口収容力の安定増大を目的とすることに変更され、入植型式も純入植より地元増反に重点を置かれることになつた。而も開拓地の現状は、土地利用の高度化も、人口収容力の安定増大も遽かに所期し得ない実情であつて、過去における根本方針に重大な誤りがあつたと考えられるのであるが、ここに改めて開拓政策の根本について検討を加え、将来における開拓方針を明確ならしめる必要ありと信ずる故に質問書を提出する次第である。

一、開拓事業が戦後緊急に取り上げられたために十分な用意を欠いていたことは否定できないことであるが、特に営農方針について従来の既存農業の延長たる性格を脱して、開拓地に適する特殊の営農型態を導入することが必要であることはいうまでもなく、当局者自身これを主張しながら、実際の施策において具体化されることの少いことは極めて遺憾である。即ち特殊の営農型態に即した家畜の導入、営農施設の整備等がなされねばならぬのであるが、右に関し次の諸点を明示されたい。
(一) 営農型態別に分類した開拓地の現況(地区別、農家戸数別)
(二) 開拓地に導入された家畜の種別、頭数(総数及び開拓農家当頭数)、政府の助成の内容、将来の導入計画の概要
(三) 開拓地に建設された営農上必要な諸施設の種類別、個数、政府の助成の内容、将来の建設計画
(四) 開拓地における土地改良事業の実施概況

二、開拓地はおおむねその立地条件が劣悪であり、入植農家の経済的資力亦貧弱であり、加うるに、農業経済の変化に伴つて、開拓地の営農並びに農家の経済を維持するには国家の強力な助成なくしては全く不可能である。然るに政府の従来の方針は、逆に国家助成を打切る方向に進み、開拓農家に対する補助率を年々低下せしめている。かくて開拓農家は極めて困難な立場に陥り、且つ前途に何等の光明も認められないものが多い。少くとも既入植の農家に対してはあくまで十分な助成を与うべきであると思うが、次の点を明示されたい。
(一) 過去における年次別開墾助成金額の変遷(総額及び一戸当金額及び今後の見透し)
(二) 開拓農家に対する営農資金融資の実績と償還成績
(三) 償還不能の場合、政府のとるべき措置

三、開拓面積百五十五万町歩の計画に対し、その実績は漸く三分一にも達せぬ現状であるが、当初何等科学的適地調査なくして出発した結果、開墾地の選定又は買収は、甚だしく無計画のもとに行われ、計画に対する実績を急ぐあまり、そのうちに多くの不適地を含み、なかには所有者対開墾希望者との間の力関係において決定された事例も少くない。他面なお多くの開墾適地が残されていることは事実であつて、農村における二、三男又は引揚者等多くの潜在失業者に働く土地を与える上においても、今後なお促進せらるべきものと考えられる。然るに最近政府の農地改革打切乃至緩和の方針が明らかにされるや、未墾地開放の事業はにわかに停頓し所有者等の策動も加わり、これがため開拓計画が挫折する懸念なしとしない。政府はあくまで既定の開拓計画を堅持するとともに開墾地の選定を誤らず、利害関係者の意思に左右されずに科学的な見地に立つて開拓計画を推進すべきであると思うが、次の事項を明示されたい。
(一) 緊急開拓事業の対象となるべき開墾適地面積
(二) 昭和二十五年度以降開墾地取得見込面積(道府県別)
(三) 開墾予定地取得の公正を期するためにとりつつある措置

四、政府は最近にいたり入植者資格について厳格な審査を行う方針をとりつつあることは適切であると思うが、海外の開拓引揚者で入植を希望するものは、なお万をもつて数えるに対し、政府はすみやかに入植地を提供すべきであつて、直ちに営農に従事しないにしても開拓関係建設工事を促進して、就業の機会を与える等、かれらをして長く流浪の民たらしめざるよう積極的方途を講ずべきである。なお、既入植者にして成績不良と見られる者でも他に就労の機会を見出しえない今日、公式的な基準にしたがつて、追放することなきよう最善の留意を要し、又最近専業農家を目標とする者に重点をおき、零細農家をその埒外に置いて、かれらをして経営拡大の希望を失わしめるが如きことは、雇傭機会が減退し農業恐慌的現象を来しつつある今日において再検討を要すると考えられるのであるが、これに対して次の諸点に関し政府の所見を示されたい。
(一) 海外開拓引揚者の入植者数と現在入植を希望する者の数及び今後の入植可能数
(二) 入植者の審査の結果に関する概要
(三) 昭和二十五年以降入植予定戸数(純粋入植農家及び増反農家別)

以上