質問主意書

第7回国会(常会)

質問主意書


質問第五四号

失業対策並びに賃金政策に関する質問主意書

本の質問主意書を国会法七十四条によつて提出する。

  昭和二十五年三月三十一日

田中 利勝      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   失業対策並びに賃金政策に関する質問主意書

 去る三月二十四日参議院本会議において本員の行つた質問に対する鈴木労働大臣の答弁は甚だ不十分であつたので、改めてここに質問書を提出する次第である。

一、失業対策について

(一) 二十四年度の労働力需給について
(1) 大臣の答弁によれば「二十四年度において新らしい雇傭が四十万と推定されているが、大体その通りの経過を辿ると見ておる。」とのことであるが、この新らしい雇傭は如何なる産業に分布されているか、少くとも産業中分類位まで分けて示して欲しい。
(2) 右の新しい雇傭とは、単にそれ等の産業において雇入れたというに止まるのか、それとも解雇と雇入れとの差が四十万に達すると見ているのか、即ちそれら産業における解雇数をも併せて示されたい。
(3) 二十四年度には相当の引揚者があつたし、又この年に就職年齢に達した人口も多い。他方、結婚、老齢、死亡、隠退等によつて就職戦線から退いた人口もある。これらの数を幾許と推定し、その差として新たに就職戦線に加つた数を幾許と見ているか、その論拠とともに推計数を示されたい。
(4) かくして労働力の需給を見たとき、失業者は果して増加したのか減少したのか、新たな雇傭増加四十万で吸収し得なかつた部分が失業者として幾許の数を示すのか明示されたい。

(二) 潜在失業について
(1) 最近の労働力調査に見れば農林業従業者の増加によつて辛うじて失業者の大量排出を防いでいる如くであり、商業、製造工業における就業者数の減退と、他面、製造兼小売業の増加とは、わが国失業の潜在化を益々著るしくしているように思われるが、政府はこれを如何に考えているか。
(2) 潜在失業者の量を如何に推定しているか。
(3) 潜在失業の対策として、その結果において失業を益々潜在化させようとしているのか、顕在化させようとしているのか、その基本方針を承りたい。

(三) 二十五年度の労働力需給について
(1) 二十五年度に生れると考えられる新らしい雇傭八十万の意味並びにその産業分布について示されたい。
(2) 二十四年度について労働力需給について質ねたと同様に、二十五年度についても、その需要と供給の見透しを如何に推計しているか伺いたい。
(3) 失業対策として公共事業、緊急失業対策を挙げているが、これによつて吸収されるのはある特殊な労働者の一部にすぎないのであつて、金融資本家的経済政策によつて造出される失業者の中には種々の勤労者が含まれている。これらの知識階級、中小企業主、家族従業員等の離職者に対する救済策は如何に考えているか。
 又失業者の移動は現下の住宅難等によつて容易でない、即ち、政府の失業対策は職種別、性別、年齢別、地域別、時期別等より見て如何に考えられているか、出来るだけ分類別に計数を明らかに示されたい。

二、賃金政策について

(一) 大臣の答弁中「日本の賃金問題は安定への線に向つて急速に進みつつある段階」というが、勤労者の犠牲による低賃金の安定、固定化を意味するものでないか、賃金と物価の関係において、その係数をもつていわれる政府のいう賃金安定の性格を具体的に示されたい。
(二) 企業合理化の重要な一環として強行されつつある現在の低賃金政策は、すでに外国の疑惑を招いている、ソシアル・ダンピングとの関連において矛盾を示すと思うがこの点についての見解を示されたい。
(三) 将来の最低賃金制は、現在の低賃金の上に立つて行われるのか、合理的賃金水準にまで引上げることを目的として設定されるのか、政府の基本的賃金政策を説明されたい。

以上