質問主意書

第7回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

北海道産いらくさについての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十五年二月十三日

岡村 文四郎      

       参議院議長 佐藤 尚武 殿



   北海道産いらくさについての質問主意書

 昭和二十三年度北海道産いらくさ集荷に関する北海道農民に対する政府補償については、既に数次に亘り関係当局に陳情し、且つ質問したのであるが、未だに充分なる責任ある回答を得ないのは甚だ遺憾にたえない次第である。政府としては、昭和二十三年度産のいらくさ原草の割当については、昭和二十三年三月十五日附農林省蚕糸局長及び商工省繊維局長名を以て知事宛に九九五、〇〇〇貫にも及ぶ尨大なる集荷指令を発し乍ら、旭川紡績に対し僅かに三四、七八九貫の割当を為したのみで、爾後のものの具体的処理について時期的に遷延した事情の一因として国民衣料需給関係が激変したことを云々しているが、これ全く政府の指令に基き凡ゆる悪条件を克服しつつ忠実にいらくさの集荷に努めた北海道農民の全く与り知らざる所であり、一面かかるが故にこそ政府としては何等かの善後策を善良なる農民に対し講ずべき充分なる理由があるものと考えられるのである。
 更に、事態を長引かせ紛糾させた原因として、関係当局間の事務連絡の不充分及び行政措置の画一的形式的なこと等がある。昭和二十三年六月十六日附商工省繊維局長名通牒によつて北海道で集荷された原草の需要者別配分を完了しているというが、単に一片の通牒を発したのみでその処理先の具体的事情についてはいささかの考慮をも払わず、日を送り同年十一月二十七日附を以て始めて北海道庁から原草処理工場の照会が為されたという事実があり、形式的に一片の通牒を為し関係官庁間の連絡を怠り以て為すべき行政措置は完了したとは決していい得るものではないと思う。なお、右の工場別配分計画は全然末端に周知伝達されていないで、昭和二十四年三月、日本雑繊維工業連合会との取引に際しても未だ具体的な受入工場名は決定されていなかつたのである。なお、旭川紡績の綿紡績への切り換え、及び北海道の原草集荷状況については報告が無い等の言を為すも、実は当初から再三に亘り中央官庁へ口頭折衝の結果漸く昭和二十四年四月一日に至つて日本雑繊維工業連合会が原章を引き取り処理することになつたのであるが、この間経済情勢の激変を知りつつも一片の通牒を為したのみでさしたる解決策をも考えず徒らに日を送つたことについては当然政府としての責任を負うべきである。
 なお、当局が原草保管について集荷者の責任を云々しているが、これ全く当を得ざるも甚しいものである。一体北海道における倉庫保管能力は道産主要食糧についていえば供出割当量に対し三〇%程度にすぎず、他は野積みの已むなき実情である。従つていらくさの一部野積みは必要已むを得ざる措置であり処理を可及的速かに行うに非れば如何に野積み分に対する保管を厳重にしても或る程度の損害を生ずるは已むを得ない実情なるにも拘らず、当局の形式的行政の為め、原草引き取り問題の解決に長日月を費した結果必然的にかかる品質低下を見たのであり、いささかも集荷の任に当つた幼少なる学童、繊細なる婦女子をも含む北海道生産農民の責に任ずべきものに非ざることは全く自明の理というべきである。
 又、政府の指示に基き「取引、保管、結果の報告等を為す」は全く「需要者及び供給者」の責任ではあるがそれに基く損失は誰が負担するかとなると全く問題が別であると考えられる。政府の指示に基き忠実に集荷した生産農民は決して政府当局の行政上の不当な措置及び事務連絡の不充分の結果生じた損失の責任を負うの必要は無いものと考える。従つて政府においても、この問題を「重要視」しているならば、従来の経緯及び右の事情を充分諒察の上既に屡々述べた如くいらくさ原草集荷についての損失補償についての責任ある回答を為されんことをここに再び要求する次第である。