質問主意書

第6回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二一号

内閣参甲第一四八号
  昭和二十四年十一月二十九日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員岩間正男君提出科学の振興、学問の自由、私立学校法案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岩間正男君提出科学の振興、学問の自由、私立学校法案に関する質問に対する答弁書

一、科学の振興に対しては、政府としても最も力を注ぎ、特に研究者の大半を擁する大学の経常的研究費である講座研究費と、重点的に主要研究を行わせる科学研究費等の増額に努めている。
 また、国立学校設置法における教職員の定員は行政機関職員定員法の規定するところに従つて定めたものであつて、その算定基礎は昭和二十三年十一月一日の現在員を基準として教官系職員については欠員のある場合もこれを整理していないし、事務系職員については欠員の二分の一を減じている。従つて国立学校設置法によつて実人員の減少はないのである。
 ただ個々の研究室においては研究面の発展に伴い現在以上に研究員を増加し研究費を増額する必要があるものもあるのであつて、これらについては、研究の上、予算的措置を講じて行きたいと考えておる。

二、思想学問の自由は憲法の保障するところであつて、これが守られねばならないことはいうまでもないが、学園が政治的中立を守り、秩序を保持することは最も大切なことである。従つて学園において一党一派に偏した言動をもつて学園の中立性を破り、学生生徒を扇動して学園の秩序を乱すがごとき者に対しては、これを厳重に措置するのが当然である。各大学における最近の措置はこの方針のもとに慎重且つ合法的に行われていると考える。すなわち教育基本法その他の法令に従つて行われており、憲法違反や思想の弾圧では決してないと考える。
 次に政治活動と学問の研究とは論理的に区別できる筈であり、真理の探求とその結果の発表という学問活動が政治活動の制限によつて必然的に束縛される理由はない。ただ学問の研究に名を借りて一党一派に偏ずるような政治活動をなすことが問題であつて、たとえ学者の行動であつても、これは許されないのが当然である。

三、私立学校法案は、現在、国会において審議中であり、また、教育刷新審議会の建議の線に沿い、かつ、私立学校代表者の意見を十分きいて起草されたものであるから、今改めてその起草を特別に設けられた委員会に委託するという考えはない。