質問主意書

第6回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参甲第一三八号
  昭和二十四年十一月十八日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 佐藤 尚武 殿

参議院議員市來乙彦君提出高物価政策の不成績並びに徴税の苛烈に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員市來乙彦君提出の高物価政策の不成績並びに徴税の苛烈に関する質問に対する答弁書

一、高物価政策の不成績について

 輸出の増進並びに国民生活の安定を図るため物価の安定を要することについては、誠に御意見の通りであつて、政府としても、デイスインフレ政策を堅持することにより、物価水準の低位安定を図ることを政策の基本としているのであつて、別に高物価政策といつたようなことを考えているわけではない。幸いにして安定計画は功を奏し、最近においては、物価も賃銀もほぼ安定の足取をたどり、久しきにわたるインフレも概ね終息の見通しを得たものと考える次第である。
 政府としては今後とも経済の安定及び自立化のための施策を推進する所存であるが、その過程においては価格調整補給金の減廃等により一部の物資の値上りを生ずることも考えられるがこの場合においても企業合理化等により極力価格の引上を低位に抑制するよう努力しており、他面闇価、自由価格は漸次下落の傾向にあるので、物価水準としてはほぼ安定を期し得るものと考えられるから、将来共この方向を推進し極力御趣意に沿うことといたしたい。

二、徴税の苛烈について

 いわゆる目標制度は、各国税局及び税務署間における課税及び徴収の均衡を図るため、一般経済資料を基としてこれに租税法規を適用した場合における税額を税務官庁の収入努力目標額として定めたものである。
 従つてこの目標制度は税務行政運営の公平を図るための純然たる税務官庁の内部事務に関する事項であつて、各納税者に対する具体的課税とは全然無関係のものである。各納税者に対する課税は、実際の所得に税法を適用した税額によるべきことは勿論である。
(1) シヤウプ勧告が目標制度にふれているのは、本来右のごとき趣旨において設定された制度が、課税の実際面において一部納税者に税額の割当という感触を与えている弊害を指摘されたものと思う。
(2) 政府は、当初から割当課税の意図のないことは勿論である。
(3) 政府は、いわゆる目標制度設定の当初において、又その後においても、本制度本来の趣旨及び本制度の設定により納税者に対し税額の割当等をなすことのないよう、税務職員に対して機会あるごとに指示を与えた次第である。

三、徴税の苛烈による国民思想の変化について

 現行税法による租税負担が相当程度に上り、これが納付は各納税者にとつて必ずしも容易でないことは論をまたないが、これがため国民思想そのものが悪化したとは認められない。