質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第九十号

内閣参甲第一〇四号
  昭和二十四年五月二十一日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員市來乙彦君提出徴税に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員市來乙彦君提出徴税に関する質問に対する答弁書

第一

(一) については、全く同感である。政府としても、納税者の正当な自主的申告納税がひろく行われるよう税法の理解普及を促進することに努めるとともに、適正課税の実現のため、徹底した実地調査を広範に励行してできる限り正確な課税の根基を把握し、これに基き課税するよう最善の努力を払つている。
(二) 所得税は、申告納税が建前であるので、納税者が自主的に正当な申告をして、納税を済まされることが、最も望ましいところであるが、現状は必ずしも納税者の申告納税のみでは、十分とはいい難い段階にあるので、納税者の申告が適当でないもの又は申告がないものについては、更正又は決定を行つているのである。更正又は決定は、その納税者につき実際に調査した結果により又は実際に調査した他の納税者の事績を基準として、納税者ごとの業況、資産状況、生活状況等と各業種目ごとの所得の大勢を調査する経済調査、同業者間の課税の衡平を調査する同業者団体等への諮問調査、その他課税の根基を掴むための間接資料及び綜合課税のための直接資料等各種の所得資料調査等を綜合勘案してできるだけ個々の納税者の実情に即した更正決定を行うこととしている。

第二

 昭和二十四年度において、所得税の予算額が大体確保できるという見込と確信の根拠についての質問であるが、所得税の予算は、二十三年度の課税実績見込の人員及び所得金額を基礎とし、最近の賃金水準、生産及び物価の状況等を勘案して、若干所得の増加を見込み、現行税制を適用して収入見込額を算定し
    源泉所得税    一、二〇二億円
    申告所得税    一、九〇〇億円
と積算した。これは、従前と概ね同様の方法により事務的に算定したのであつて、今後経済界に甚しい変動がない限り確保し得ると確信している。即ち源泉所得税については、最近の収入状況が毎月一〇〇億円程度であるので、予算額の確保も比較的に容易であると考えられ、問題は申告所得税についてであるが、本年度においては、申告納税制度の普及宣伝につとめて、その昂上を図ると共に所得の実額調査及び滞納税金の整理等に一層の努力をつくすこと等により予算額を確保し得ると信じている。

第三

 過般毎日新聞紙上に掲載された徴税の裏表と題する投書に指摘されたような不謹慎な言動をもつて納税義務者に応対した税務官吏があつたことが事実とすれば、甚だ遺憾であつてこれらについては将来かかることのないよう十分注意致したい。
 次に投書の内容の税の割当課税の問題であるが、政府としては、納税者団体又は納税者個々に対して税の割当課税を行うというがごとき方法は絶対に採らないのであつて、税はどこまでも税法の規定に従つて適正に賦課徴収されるべきでありまたこれが実現に努力致しておる次第である。ただ課税の公平を期するため一応徴税の目安を示しているが、これはどこまでも目安であつてこれがために納税者に対し割当課税を行うがごときことはないのである。先にも申述べたごとく課税はどこまでも法規の命ずるところにより行われるべきものであるから、租税収入が予算額を超過する場合もあり又予算額に達しない場合も生ずることは、現在の法律の建前から当然の結果である。
 次に去る十一日連合軍総司令部の徴税関係官の談話においても租税の負担の公平を特に強調され腐敗税務官吏の一掃を要望されておつたが、政府においてもこれらの問題については常に関心を払い、税務官吏の素質の向上と指導訓練には特段の工夫と施策を凝し、着々これが目的を達成しておるのであつて、今回も悪質税務官吏に対しては徹底的に整理を断行して税務行政運営の刷新向上を図るとともに能率的な能行によつて、課税の適正を期する所存である。