質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第三十五号

内閣参甲第三八号
  昭和二十四年四月一日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小林米三郎君提出石炭調査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小林米三郎君提出石炭調査に関する質問に対する答弁書

一、イ、各炭鉱別復金融資額については目下調査中であり資料作成までに相当時日を要するため会社別復金融資額を別表(一)に示す。
ロ、用途別復金融資額については別表(一)に示す通りである。
ハ、右については目下資料作成中につき完成次第直ちに回答する。
ニ、前項と同じ。

二、イ、現行単価算出の基礎については次の通りである。
1 操業度 月  二七八万トン
2 能率  月 五、九七八トン
3 労務者数 四六五、〇〇〇人
4 労務費
○坑内外比率 五五%対四五%
○基準賃金 昭和二十三年四月及び五月の労資賃金協定による。
○基準外賃金の基準賃金に対する比率 二五%
○法定福利費 健康保険料、厚生年金保険料、失業保険料及び災害補償保険料の企業主負担分を前記の賃金水準及び人員により算出した。
○炭鉱福利協会の運営費を織り込んだ。
5 物品費及び経費
 物品費及び経費は基礎原価に各費目毎の値上り倍率を乗じて計算した。
 基礎原価の算出は次の方法によつた。
(イ)全国一四二鉱(出炭量にして全国の八〇%)の昭和二二年一〇月の報告出炭原価を基礎とし、これに一定の査定を加えたものを原価の低い順に並べて総出炭量の七五%をカバーする炭鉱の原価(七五%バルクライン原価)を基礎とした。前回(昭和二十二年七月)の改訂の際には実績原価を査定したものの加重平均額を基礎としたが今回の補正に際して特に七五%バルクライン原価を基礎とした理由は平均価格を炭鉱別に配分するに際して完全な個別原価主義によるときは、加重平均原価を基礎としても各炭鉱ともペイする価格となるが今回の如く(後述)単一価格を以て原則的な炭鉱別価格とする限りバルクライン価格を採らなければペイしない炭鉱数が多くなり出炭量の確保に支障を来す虞があるからである。
(ロ)右のバルクライン原価を適正な構成比によつた各原価要素に区分しこれに操業度の差異による修正を加えた。
(ハ)一般的には右の方法によつたが特に別途の計算を行つて基礎原価中に加えたものの内に主なる項目として次のようなものがある。
6 特別鉱害復旧費鉱業者負担分
 昭和二十三年三月閣議決定による過去の特別鉱害復旧計画中二十三年度の炭鉱鉱業権者負担分を炭価中に織込んだ。
7 減価償却費
 昭和二十二年三月末の固定資産の帖簿価格にその後の設備資金融資額を参考として最近の帖簿価格を推定しこれを基としてトン当り償却費を計算した。
8 支払利子
 一般利子の外最近までの赤字融資の凡てについての支払利子を見込んだ。
9 その他
 出炭原価を送炭原価に換算する場合は炭鉱自家消費炭数量の総出炭数量に対する比三七・三%として計算したこの比率は上期配炭計画を基礎とし、且つ炭鉱自家発電設備動員による送炭増を見込んで計算したものである。以上の如くにして計算された送炭原価に更にその三%に相当する予備費を加算して生産者価格水準とした。本予備費は将来起りうべき不時のリスクその他に備えて設けられたものである。

ロ、一、希望炭価     二、七五八円一四銭
二、算出基礎(現行炭価と相違する点)
希望炭価現行炭価
操業度二、七〇〇、〇〇〇トン二、七八〇、〇〇〇円
能率五、八〇七トン五、九七八トン
基準外賃金三五%二五%
職員給料(賃金との格差)二五%一〇%
雑給賃金   七、〇〇六円
人員  二二、〇〇〇人
旧炭価の賃金に対する比
北海道手当手当     五〇〇円
人員 一三三、〇六八人
見込まない
はね返り手当     二五〇円
日炭借入金償還金(トン当)一六円九一銭
減価償却(固定資金)二〇、二八二、七二三千円七、七四〇、二二六千円

ハ、一般物価政策上妥当ではない。

ニ、1 炭鉱労務者賃金値上り補給金
    予算額       二、四〇〇、〇〇〇千
    支払額       一、六六六、六六六千円(概算)
    残 額         七三三、三三四千円(近日中精算の予定)
2 北海道炭砿従業員手当補給金
    予算額       一六一、一四七千
    支払額       一三〇、五七九千円(概算)残額については近日中に精算の予定。
3 炭鉱労務者賃金はね返り補給金
    予算額       八二、七七六千
    支払額       八二、〇三三千円(概算)

ホ、石炭企業の経営については、企業三原則、経済九原則及び昭和二十四年三月十日付、「石炭鉱業の基礎確立の覚書」等に即し判断しなければならないと考える。

へ、右についての統一的な見解は、いまだ政府に対して表明された事がない。

ト、現在の炭鉱経理は終戦後漸次立直りつつあるが戦時中からの政府依存の観念から十分に脱却できず放漫な経営を続けている事例もみられる例えば超過勤務手当の不当過払福利厚生費の過大なる支出及び資材の冗漫な使用等を行つて居り而もこれらを明確ならしめるような会計制度の整備統一ができていないために本社は各炭鉱現場を充分に把握していないという事例がある。今後は経済九原則及び今回の炭鉱経理改善に関する総司令部の覚書に基づき炭鉱経理健全化を阻害している部分については徹底的に改善するような措置を講ずる必要があり政府は目下その具体策を鋭意検討中である。

別表(一) 炭鉱業者復金借入金残高調 1/2
別表(一) 炭鉱業者復金借入金残高調 2/2





内閣参甲第三八号

昭和二十四年四月八日

内閣総理大臣 吉  田   茂      


       参議院議長 松 平 恒 雄 殿

四月一日付内閣参甲第三八号をもつて一応答弁書を送付したが、炭鉱経理問題の一ノハ及びニに付いて、その後の調査の結果を別紙のとおり送付する。



   参議院議員小林米三郎君提出石炭調査に関する質問に対する答弁書

(一)炭鉱経理問題

(ハ)地区別、用途別融資については別表(一)に示す通りである。
(ニ)に関しては別表(二)に示す通りである。

別表1 炭鉱業者復金借入金残高調 1/4
別表1 炭鉱業者復金借入金残高調 2/4
別表1 炭鉱業者復金借入金残高調 3/4
別表1 炭鉱業者復金借入金残高調 4/4

別表2 復金借入残高九州、北海道地区調