質問主意書

第5回国会(特別会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参甲第一一号
  昭和二十四年二月二十三日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出海上保安庁運営に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出の海上保安庁運営に関する質問に対する答弁書

一 海上保安庁は海上における治安の維持と航海の保安を目的としこれがため、全国に亘り海上保安本部九箇所、海上保安部十五箇所、海上保安署二十三箇所、港長事務所五十六箇所、水路観測所八箇所を設置し、業務の運営に万全を期しているがその現状及び実績は次の通りである。

(1)船舶の状況
(イ)保有船舶(昭和二十四年二月一日現在)
巡  視  船三六隻
灯 台 補 給 船五二隻
測  量  船二〇隻
港 務 用 船一一二隻
掃  海  船五三隻
(ロ)可動船舶及び同稼動率(昭和二十三年十二月)
巡  視  船三〇隻四六%
灯 台 補 給 船三九隻四五〃
測  量  船一七隻四五〃
港 務 用 船六〇隻五二〃
掃  海  船五一隻五〇〃
(註)1可動船舶とは月間一日以上稼動したものである。
2 稼動率は実行動日数のもので、修繕、待期日数を含まない。

(2)犯罪発生及び検挙状況(昭和二十三年五月乃至十二月)
発 生 件 数九七一件
検 挙 件 数七九六〃
検 挙 人 員三七九〇人
(参考)
発生件数検挙件数検挙人員
密  貿  易七五七四三九四
不 法 入 出 国九一八五一七九六
密     漁一六六一四九七〇七
経 済 事 犯三〇三二七五五三一
海事法令違反二一一一〇四一五九

(3)海難発生及び救助状況(昭和二十三年五月乃至十二月)
発生件数内要救助件数救助件数救助人員
汽     船一四〇四三七二一〇三一三八(四件)
機  帆  船一〇五三五二九二二七六二七(二二件)
帆     船二一四一一一六五
  計二六七一一〇一二三九五七六五
(註)救助人員は船舶と無関係に緊急事態における人命のみの救助数である。

(4)沈船処理状況(昭和二十三年五月乃至十二月)
船 体 引 揚三〇六隻一一八、二二〇噸
積 荷 救 助三四〃一三、一一一〃
解     撤九五〃一六八、六一九〃

(5)機雷処理状況(昭和二十三年五月乃至十二月)
感 応 機 雷   四個所
繋 維 機 雷昭和二十一年八月までに処理済なり。
(参考)
触 雷 船 舶

(6)航路標識の状況
(イ)航路標識の現状(昭和二十三年十二月一日現在)
施 設 者 別現在数業務執行数休止数
海 上 保 安 庁六二八五六六六二
公     設六六七五一一一五六
   計一二九五一〇七七二一八

(ロ)新設及び復旧状況(昭和二十三年五月乃至十二月)
新設復旧
灯     台二基九基
灯     標一〃
灯  浮  標三七〃
浮     標三三〃
霧 信 号 所一ケ所
無線方位信号所六ケ所

(7)測量状況(昭和二十三年五月乃至十二月)
水 路 測 量七港湾(富山、三崎、尾道、新居浜、八戸、塩釜、小樽各港)
海 象 観 測四海域(本州南方、東方、日本海、北海道)
沈船位置測定一ケ所(御坊沖)
海 底 調 査一海域(釧路沖)
探 礁 調 査二ケ所(飛島北方、大和礁)

 以上は開庁以来十二月までにおける実績の概略であるが、昭和二十四年度においては、新造船計画、航路標識の整備、第三次掃海の継続及び海難救助態勢の強化等を推進して業務運営に遺憾なきを期する方針である。

二 終戦を契機として密貿易は相当増大している現状に鑑み保安庁開庁後は国家警察その他関係行政庁と緊密な連絡をとりこれが取締の強化に努め、開庁以来十二月までにおいて検挙したものは、七四件、検挙人員三九四名にして内密輸入は三三件、二四〇名に及んでいる。
 この密輸入の実情をみるに、輸入品目は朝鮮、台湾方面からの砂糖、米穀を主とし、この外薬品、生ゴム等わが国に欠乏している物資について広範に亘つているのである。
 この密輸入の経路は仙崎を中心とする日本海沿岸に上陸するもの、博多、長崎港を中心とする北九州、長崎附近に上陸するもの及び関門海峡を経て瀬戸内海沿岸の各地に上陸するものの三つを主なるものといえるが、他に対島、済洲島を中継基地とするものなどがあるが、取締強化に従つて最近では日本海沿岸殊に山陰地方にその中心が移りつつあるように認められるのである。
 これらの密輸入の方法は、通例漁船乃至機帆船であるが、最近の実情は日本船舶を利用する傾向にあり、沿岸に接近すると同時に上陸地と信号により連絡し、荷を積みかえて人里離れた海岸に荷揚げする等の手段をとつているのである。
 この密貿易の取締については、中心経路の方面に保有船舶の大半を配置して重点的に取締を強化するとともに、関係各行政庁と協力して、情報、通信網組織を整備すべく、目下実施中であり、また昭和二十四年度に計画中の新造船についてもその主力を重点的に配置する予定であり、併せて職員に対する必要な訓練養成等万全の対策を講ずる方針である。