質問主意書

第5回国会(特別会)

質問主意書


質問第六十三号

食糧確保臨時措置法の運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十四年四月十四日

池田 恒雄      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   食糧確保臨時措置法の運用に関する質問主意書

 食糧確保臨時措置法の運用に関し、再度質問書を提出する。

一、昭和二十四年度の生産者別農業計画は、今年二月末日までに公表しなければならぬとの答弁であつたが、二月末日までに公表した町村は殆ど見当らないばかりか、三月末になつて公表されてないし、未だ公表してない村が沢山ある。このような事態に対し政府は如何なる措置をとるのか。
 またこのように生産者別農業計画が遅れるのはどうした理由か。

二、多くの市町村では昨秋、事前割当であるが故に、戸別の実収高調査をやつていないのである。従つて、作報その他の調査により一応、府県別なり、市町村別の推定実収高を把握することができるにしても、市町村当局は戸別の実収高を把握することは困難である。殊に収穫後六ケ月以上もすぎた今日では、どんなに賢明な技官でも困難である筈である。
 これでは、超過供出の戸別割当の基礎がないのであるから、従つてその割当も事実上困難であると思うのであるが、各市町村では、どのような方法によつて超過供出の戸別割当をやつているのかを説明されたい。

三、昨年度の地力調査や事前割当については相当デコボコのあつたことを政府も認められている。これは致し方ないということにもなるが、その結果生ずる問題は致し方ないではすまされない生産者の基本的権利の問題である。
 超過供出価格は三倍、報償は二・五倍ということであれば、地力調査や事前割当のデコボコのため、ある者は超過収穫がなくても割当が低かつたために、超過供出の特典を享受して、全く元手なしで成金になれる。ある者は事実超過供出相当の供出をしても特典を享受できない。またある者は飯米を割いて供出をしても一〇〇%に達しないで官憲の迫害を受くるのみか、既成の資産を奪われるという死命的損害を享受するのである。
 政府は、この農家の不当なる利得、不当なる損害をどのように処理するのか説明されたい。
 今日百姓は成金になるか、貧乏になるかは、その努力や豊凶の運命ではなくて、どんな割当が来るかにある。デンスケトバクと同じで当つたら運、外れたら不運といつている。これでは経営の前進も技術の進歩もなくなる。このことは政府もすでに承知のことであるが、いかなる対策をもつているかを説明されたい。

四、政府は民主的に選出された農業調整委員を割当にあづからしめて、その公平化を期待しているというが、これはとんでもない間違いである。非科学的、非法治的謬見も甚しい。
 なるほど農調委員は民主的制度によつて選出されているが、それ故に割当が民主的、科学的になるということはない。
 それは政府機関たる農林省統計調査局調査成績にも現れているから政府自身よく知つていることであるが、農業調整委員の多くは中流以上の農家であり、地主出身が極めて有力である。公職を兼ねるもの過半数という顔役連中が多い。そしてまた委員は殆ど例外なしに部落利益の代表機関である。その区域内の割当については、何れの委員も自己の割当に利害干係がある。自己の利害に関係ある地区内の割当にあづかるといつた制度は民主的であるか知れないが、公正でもないし、科学的でもない。
 仮りにその委員が自己の割当には発言しないとしても、他人の割当に発言すれば、自己の割当に発言したと同じことである。委員の打つた一石は遠廻しにその委員の田に水を引くのである。その地区内の農業について利害関係のある委員が、その地区内の農業について計画をするということは法制上よりみても本質的に妥当ではない。従つて、私は農業計画を民主的に科学的にし、割当を公正ならしめるには、更に別途の方式をもたなければならぬと考えているのであるが、政府は、貧農の飯料を犠牲として国の食料の安定を図るところの、農業調整委員絶対主義を最善の方式として堅守しようとするのか。

五、政府は飯米農家には割当をしないと答弁しているが、事実飯米農家にはヂヤンヂヤン割当され、現在その供出が進行している。地方の役人は強権をもつておどかして貧農を苦しめている。これは直ちに停止され、その供出した飯米は返還すべきものであると思うがどうか。
 またこのような飯米農家の苦痛や損害はどうしてくれるのか。

六、三月四月の世は花見の大平楽であるのに百姓だけが供米で泣かされる。こういう法は一体どこできめるのか、また供米不成績の責任は百姓だけが一方的に負わなければならぬのか。
 三―四月ごろ供米督励といつた時季はずれの不仕末をやつた役人の責任は何ら追究されないのか。

七、農林大臣の指定する雑穀、都道府知事の指定する雑穀について、
(1) 農林大臣の指定している雑穀の種類とその指定の方法
(2) 知事の指定している雑穀とその指定の方法
(3) 農林大臣の指定と知事の指定の関係

八、第三条第二―三項の規定について、
(1) 昭和二十四年度の奨励措置
(2) 昭和二十四年度の金融措置

九、農業計画の公表方法について
 これは、単に役場の前に一枚の紙をはつただけでよいのか、もつと親切な方法をとるべきものか、政府はいかなる指導をしているか。

十、生産者の意見を徴する方法について
 これは農家を訪問して聞くのか、出頭を求めるのか、経営申告のようなものを提出させるのか、多くは意見を徴してないようだが、意見を徴せずして割当をした場合、これをどう措置するのか。

十一、生産者の経営についての勘案について、個人の経営について、六項目の事項を勘案することに法律は規定しているが、この六項目の変化と割当の関係はどう変化するか、例えば家族の多少と割当数量とか作物の種類の関係、牛馬の有無と作物の選択、その割当数量の関係、また農家自身のもつている農地利用計画と割当の関係、等。
 今年の割当に当つて、これらのことがらが実際どのように勘案されているか、具体的事例(又は仮定のサンプルでもよろしい)をあげて、戸別農業計画の模範的定石を説明されたい。

十二、茨城県鹿島郡鉾田町所在、常東農民組合は左記のごとき文書を発表している。事の真相と政府の対策を発表されたい。

      記

 昭和二四年度農業計画について、県下各町村は軍政部の指示した三月十八日までに個人割当を完了したとの報告をしている。
 然し事実はこれと全く相違している。大多数の町村はいまだに個人割当を行つていないし、公表もしていない。
 個人割当を完了したという町村も仮割当もしくは暫定割当と称して、昨年度の割当をそのまま本年度に移行させたり、部落割当をなしたままにしている。
 しかもこれらの多くは非公開で行つたもので明らかに食糧確保臨時措置法違反であり、その割当は何らの効力もないものである。
 県はこの間の事情を承知していながら虚偽の報告を承認し、何らの処置も講じていない。農民の関知しない状態で、農業計画が作成されるという奇怪な事態が行われているのである。
 このことは県下の農民をきわめて不安にしている。
 かかる虚構の事実の上に農業計画がすすめられるとすれば、その違法は由々しき大事である。
 県当局は直ちに、この違法と虚構の事実を率直にみとめ、その罪を謝し急遽処置をとるべきである。
 右声明する。
  一九四九、四、三