質問主意書

第5回国会(特別会)

質問主意書


質問第三十八号

上田繊維専門学校単科大学昇格に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十四年三月二十六日

矢野 酉雄      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   上田繊維専門学校単科大学昇格に関する質問主意書

 わが国は世界屈指の繊維工業国として夙に定評あり、繊維製品は久しくわが輸出貿易の大宗であつたが、戦後国民経済の再建は特に斯業の振興に俟つべきものが多い。
 しからば、斯業に対する技術的指導の最高学府として、少くとも一箇の理想的繊維総合大学を設置すべきは、ひとり経済国策上のみならず、新学制実施等の文教的見地より観るも、喫緊の要務でなければならない。
 既に理想的繊維総合大学の設置が国家喫緊の要務に属するとすれば、文部省が卒先繊維専門学校を設置したる上田市にこれを設置するが理論的に妥当なるのみならず、経済的にも捷径でなければならない。この故に、長野県議会は昨春以来、三回にわたつて上田繊維専門学校を単科大学として昇格をせしむべきこと、及びこれがためには長野県としても一切の便宜を提供すべきことを議決し、本院並びに衆議院の文教委員会もまた、第二回国会において、満場一致をもつて同校単科昇格の請願を採択したのであつた。しかるに、自来今日に至るまで、まさに一ケ年に垂んとするにかかわらず、いまだその実現を見るに至らざるは、われわれの諒解に苦しむところである。
 よつて、左記四項の質問を提起し、これに対し、文部当局の具体的にして明快なる御答弁を要請する。

       左 記

一、文部当局は上田繊維専門学校を単科大学として昇格せしめ、以て理想的繊維綜合大学を設置するの意志ありや否や。もしその意志なしとすれば、その理由如何。

一、われわれの見る所によれば、既に水産大学、商船大学等の設置が決定せられたる以上、繊維工業国たるわが国として一箇の繊維大学をもたざるべからざるは自明の理に属する。しからば、国立新制大学の発足と同時に、上田繊維専門学校を単科大学として昇格せしむべきは、これまた言を俟たぬところである。
文部当局はこの際同校の単科昇格を断行するの意志ありや否や。
 徒らに問題の解決を遷引して、地元県民をして陳情請願を繰返さしむるは、取りも直さず、政治の貧困を意味するものにして、当局の責任重且つ大なりと考えられるが、これに対する文部当局の所見如何。

一、文部事務当局は、該件がいまだ大臣の正式決裁を得ないにもかかわらず、いな、大臣が大臣個人としては、賛意を表し、その実現を希望せられしにもかかわらず、大臣の意向を毫も顧慮することなく、夙に絶対反対を表明し、敢て譲らざるは、そもそも如何なる権限に基くや。決裁権は大臣にありや、将又事務当局にありや。文部事務当局は、民主政治を如何なるものと思惟するや。

一、上田繊維専門学校の単科昇格の可否は、大学設置委員会に附議し、その答申を俟つて、決裁せらるべきものと聞く。
 しかるに、文部事務当局がいまだ同委員会において決定せざる以前において絶対反対を表明して憚らざりしは、同委員会を無視したるにあらずんば、その答申の内容を予断したものといわねばならない。文部当局は大学設置委員会を如何なるものと思惟するや。大学設置委員会の性格如何。