質問主意書

第4回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

京都市において発生せるジフテリヤ予防接種副作用による災禍に関する質問主意書

右の質間主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年十二月九日

カニエ 邦彦      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   京都市において発生せるジフテリヤ予防接種副作用による災禍に関する質問主意書

 今回京都市において発生したジフテリヤ予防接種副作用による災禍はこれまでに類例のない処であつて、その惨状は実際現地を見たものでなくては想像することが出来ない状態である。これが原因については既に当局において調査研究の結果その注射液に基因することが明らかにされ過日厚生省より発表された所である。
 本予防接種の実施者である京都市は予防接種法に基き当局の指示に基いて国家検定を受け配給されたワクチンを使用その間何等過誤なく実施したのであるが遂に此の災厄を惹起したもので、その責任が製造者にあり検定上誤りなかつたにしてもこれが製作の指導監督の責任は当然政府の免れ得ないものと断定する。
 本月六日午後六時現在の患者の総数は八四七人に達し入院加療したもの一二五人(六日現在入院者は七六名)その他は通院治療中のものである。此の中死亡二十名であるが尚日々数名が次々に悲しい転帰をとつていて、此の災禍が何処まで拡大して行くか全く予断を許さない状態である。しかも両親は約一ケ月に互る看護に心痛のあまり身心共に疲労し看病に専念した関係上経済的にも行きづまりを生じ物心両面に困憊し法の根拠があるとかないとか、或は予算上の手続がどうであるとか論じている場合でなく救済に一日を争うことで此の際直ちに万全の措置を講ずることが真に急務である本件は予防接種法が実施せられた最初であるためその国民に及ぼした反響は極めて大なるものがあり誠に遺憾に堪えない。
 本法実施の前途又多難と云わなければならない。この事件は独り京都市のみの問題でなく国家の重大事件として取扱わねばならない。

 政府は本件の重大性に鑑み今までに如何なる措置をとつたか、特に経費の点に就てどの程度の支出をされたか、又今後如何なる方法をもつてこれに対処する考えであるか、この点質問する。