質問主意書

第4回国会(常会)

質問主意書


質問第七号

田畑小作料改正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年十二月八日

木檜 三四郎      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   田畑小作料改正に関する質問主意書

 余は小作料の改正を速かに実行すべき事を左記の実例を挙げて政府に質問した。

農 林 大 臣 の 告 示 せ る
小 作 料 金 は 左 の 通 り
昭 和 二 十 三 年 九 月
買   入   値   段
闇    値
一石七五・〇〇一石三、五九五・〇〇二〇、〇〇〇
大 麦一石二四・三〇大 麦一石一、五一六・二二三、〇〇〇
小 麦一石四四・四三小 麦一石二、二四七・七五五、〇〇〇
大 豆四三・八八大 豆一石昨年産 一、四〇三・三一 三、〇〇〇

 然るに政府は二十一年の小作料は当時の米価より若干上廻つた石当り七十五円だ、これが当然の帰結であると答弁せられたが二十一年の公定米価は石当り五百五十円である。
 衆議院はこの政府公定の石五百五十円は安過ぎると称し衆議院の食糧対策委員会は二十一年十二月二十一日左の決議をして政府に提出している。

一、米価石当り五百五十円はかなり低位にある事実は否み得ず。
 政府は肥料、農機具、農用資材を引下げる措置を断行すべし。

二、政府は供出、集荷、輸送各部間の悪条件を打開し遅配其他食糧配給不調の発生を未然に防止すべし。

三、政府は増産、供出の昂揚を期し之が裏付として肥料其他農用資材の配給確保につき特別の対策を講ずべし。

以 上  


政府は本決議其他実際を調査した結果
  二十二年の米価石当り千七百円に値上げした。
  二十三年は更に値上げして石当り三千五百九十五円にした。
 即ち政府答弁の二十一年小作料石当り七十五円は当時米価の上廻り値段である之れが当然の帰結であると答えられたが虚偽も甚しと云うべきである。
 如上の事実に照らし殆んど只の如き安値の小作料金を地主は二十一年より二十三年十二月の今日に至る迄受取らねばならぬ、しかして穀納は厳禁して居る従つて地主は米、麦、大豆を入手せんとするには高き闇値に非ざれば主食物を獲得する事が出来ぬ。政府は国民を差別待遇する意図を有するものでないと答弁せられたが、小作料金釘付けの如きは地主を差別待遇して居る実例である。即ち小作料の極端なる安値は地主を苦めるのみである。若し夫れ農林省農政課職員の月給を他の職員月給の増俸あるに拘わらず二十一年当時の月給其儘に二十三年十二月の今日迄据え置いて、不平不満もなく公職に勤勉せらるるの忍耐あるか自己の身に反省して判断すべきである。
 農林大臣一片の告示で小作料金を受取る地主は主食物を得る事が出来ない。これ等地主は今日問題たる公務員二百七十万人より多数の人達である。しかも之等地主は涙を呑んでこの不公平、不平等に甘んじて居る。新憲法は国民平等、財産権不可侵を規定して居るではないか。
 若し夫れこれ等地主に労組の如き団体組織があれば一日たりともかかる政府の偏頗、不公平の行為を許さぬものである。悲しい哉、地主に団体がない。唯一人一人孤立無援の状態なるがために今の為政家は訴えざるも迫らざるもこの不公平、不平等の点を救うだけの政治的手腕を持たぬ。一人所を得ざるも為政者の罪であることを知らぬ。故に余は数千人の悲惨の位地にあつて苦闘せらるる健全なる地主のために昨年以来数度に亘り小作料金の速急改正すべき所以を述べて政府に質問した訳である。
 今や農家が米の収穫に当つてモミスリ一俵(玄米四斗入)の料金は四十八円乃至五十円である。
 地主への小作料金玄米四斗入一俵は唯の三十円である。
 今日東京において外食者の支払う料金は一食三十円である政治は実際問題であることを忘れてはならぬ。
 紙上答弁で胡麻かすことを能事としてはならない。
 政府は賃金ベース三七九一円を五三三〇円ベースに改定せんとして議会の協賛を求めているではないか。
 かかる事実に照らしても小作料金の極端なる釘附安値は地主に主食物を与えぬ惨酷な規定である。従つてかくの如き規定は新憲法下に一日も存在を許さぬものと信ず。
 政府は虚偽の答弁を止めて速かに小作料金改定の意志ありや否や、ここに明答を要求す。

  右に対し至急文書にて答弁せらるるよう要求する。