質問主意書

第3回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二十四号

内閣参甲第一八八号
  昭和二十三年十一月三十日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員板野勝次君提出中小企業対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員板野勝次君提出中小企業対策に関する質問に対する答弁書

一、中小企業のわが国経済構造上に占める重要性にかんがみ政府はさきに中小企業庁を設置し、中小企業の事業活動上の機会均等を実質的に保証すると共に、中小企業の経営及び技術の改善を指導援助して、その水準の向上を図らんと鋭意努力して来たのでありまして、一部巷間に伝えられているような、劣悪企業は整理をするというようなことはないのであります。
 金融緊急措置令、融資優先順位決定、傾斜生産方式及び復興金融金庫法は決して御説のような中小商工業者を圧迫するための立法ではなく資金面からも資材面からも逼迫した現下のわが国経済情勢に対処するための必然的措置であり、しかも何等、中小商工業者を拘束する精神を以て立案されたものでもありません。これらの制度の運営が中小商工業者に対しても公平に行われるように努めなければならないことは勿論でありますが、中小企業対策はこれ等諸制度を廃止しなければ始められないという関係のものではなく、政府の中小企業対策は飽く迄も中小商工業者の競争力を指導援助するものでなければならぬのであります。
 政府は右の考えの下に、中小企業者が中小企業であるがために不当に圧迫されることのないように、充分に業者の声を聞くと共に政府内部の連絡をも緊密にとつて参つたのでありまして、今後と雖もこの方針を堅持する考えであります。
 御質問によれば「救いがたい企業」とはどのような業種であるか、その業種を列挙せよとのことでありますが、敗戦により打ちひしがれた日本経済を速かに再建し文化日本を建設することこそ国民の現実の願いであり各種の施策、特に経済施策はこの経済再建を目標として進められているのでありまして、中小企業対策もその一環として取上げられるのであります。政府はこの観点から中小企業の向上に必要な一切の啓蒙指導を行う方針で進んでいるのではありますが、もし企業が、これに対応して立上つてこなければ如何ともいたし難いのであります。政府がコレコレの業種は「救いがたい企業」であると銘打つことは、勿諭おかしなことでありまして、そんなことは考えていないのであります。

一、課税問題は中小企業にとつて死活問題でありますが、国民所得の相当部分が租税として徴収されることは、敗戦国として止むを得ないことでありますので、政府としては国民各階層間、業種間、国民相互間の負担の公平と云うことに特に努力して行く所存であります。
 従つて中小企業に特に不利となるような租税、例えば取引高税の如きは速に廃止したい意向で研究中であります。又所得税の決定においても、中小企業に過重であるとの声が強いのでありますが、その真相については色々検討の要があると思いますが、一面中小企業の帳簿組織が整備せず、課税の合理的な基準が明確でないことにもよりますので、中小企業の経理方法を改善し、帳簿組織を整備するよう指導して行くつもりであります。