質問主意書

第3回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参甲第一六二号
  昭和二十三年十一月十三日

内閣総理大臣 吉田 茂      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出引揚同胞対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出引揚同胞対策に関する質問に対する答弁書

 今次の引揚は、史上前例を見ぬ一大民族移動であつて終戦後疲弊した国土に帰還し来つた全国民の一割にもなんなんとする多数引揚同胞の援護、更生を図り彼等をして正常なる国民生活に復帰融合せしめることは、日本再建途上において是非共解決せられねばならぬ問題であると存ずる。さればこそ政府においては、現下の国家財政の窮乏をおかして能う限り引揚援護更生の施策を講じている次第であつて決して引揚同胞問題を消極的に取扱うというようなことはない。特に先般の第二回引揚同胞対策審議会において決議された引揚援護更生強化方策要綱については、各省ともこの線に沿つて可能最大限の努力を払う旨閣議において諒承しているのであり又引揚同胞対策に関する第二回国会の決議は政府としても今後とも充分これを尊重して行く所存である。なお一般福祉救済の施策の面においては無差別平等の原則に従つて引揚者のみに特殊な取扱はなし得ないが、引揚者の更生再起については引揚者の特殊事情を考慮して努めて実情に即する施策を講じて行きたいと思う。引揚同胞問題に関する政府の所信は以上の如くである。

 次に質問については

一、引揚同胞対策審議会の運用に必要な経費は既に準備しており審議会の活動に支障はないと存ずるが将来もし不足を生ずるようなことがある場合は善処する積りである。

二、所得税は、誰でも所得があれば課税されその所得の中から納税することになつている。
 外地引揚者も、引揚後に収入があれば、その収入を得るために要した必要な経費を控除して所得税を納付することになる。
 外地引揚者については、事情はまことに同情にたえないが、現在のところ、諸般の情勢により特別に軽減又は免除することはできないものと考えている。

三、引揚者に対する事業資金については従来復興金融金庫による中小企業金融の一環として取扱つてきたが引揚者の特殊事情に鑑みこの際復興金融金庫の特別融資の方法をひらくべく目下研究中である。

四、についても引揚同胞の更生対策の一環として何分の努力を払いつつあり。

五、未復員者給与法についてはその後の経済情勢その他諸般の事情の変化に応じて扶養手当、帰郷旅費、遺骨引取経費及び遺骨埋葬費を増額すると共に新たに療養費、障害一時金を支給することを研究中であつてこのための経費は復員遅延による本年度予算の余裕を以て支弁する方針で、目下細目について検討中であるが今後関係方面の諒解を得た上はでき得る限り速かに改正案を国会に提出致したい。