質問主意書

第3回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四号

引揚同胞対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年十月二十二日

北條 秀一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   引揚同胞対策に関する質問主意書

 引揚同胞対策の基本方針と実施目標は第二回国会において可決されたる引揚同胞対策に関する決議によつて明らかなところである。引揚同胞問題は、戦後処理問題の最も重要なるものであつて、この問題の処理は、国土計画の観点より人口問題として解決せられねばならない。
 しかるにこの問題は歴代内閣によつて極めて消極的に取扱われていたことは極めて遺憾なることであつた。引揚同胞は今日まで経済的には甚だしい差別不平等な待遇を受けて来たことは否定出来ない。かかる差別不平等待遇が国民の特定部分にのみ押しつけられていることは社会道義からして看過出来ないところである。従つて引揚同胞対策を積極化し、その待遇上の不平等と差別扱いを是正することは、引揚同胞を更生せしめ、正常なる国民生活に復帰せしめる所以であると共に、正しい者の報いられる道義日本再建の根本である。
 右に述べたところを政府は肯定せられるかどうか。所信を承りたい。
 更に以上の基本的見解にもとづき次の諸点について政府の所信を明らかにされたい。

一、引揚同胞対策審議会をして国会の要望する如き成果を挙げさせる必要があることはいうまでもないが、これがために相当程度の経費を必要とする。現在までわれわれの知るところでは殆んどお茶を濁す程度ではないかと思う。新内閣は一大決断を以てこの審議会の経費を準備し国会の期待にそむかないようにされたい。

二、本春以来の引揚同胞に対して少くとも所得税地方住民税等各種税金を一ケ年間免除すべき方針を国会は明らかにしたが、今日までの実情は殆んど実施されていない。政府は直ちに行政の末端まで、この方針が徹底し且つ実施せらるる様に善処されたい。

三、引揚同胞の更生対策は国のために又引揚同胞自身のために最も緊要な点である。昭和二十一年十二月当時内閣総理大臣たりし現総理大臣吉田茂氏が引揚同胞更生対策として一五〇億円の融資をする方策を実施せんとしたことは全く機宜に適したことであつた。その後片山、芦田内閣は、かかる思い切つた方策を考えることさへもしなかつたと思われる。しかるに第二回国会における引揚同胞対策決議によつて情勢は劃期的発展を見た今日である。よつて今日において第一次吉田内閣が実施せんと考えた方策を再現することは最も適切であるが、これについての所信を承りたい。

四、引揚同胞は依然住居に困り抜いているのである。第二回国会は二〇万戸の緊急建設を決議したが、この住居を、資力のない引揚同胞が自力で解決することは、勿論不可能なので何うしても政府の手で建築しなければならないが、現政府にその用意あるか何うか。

五、終戦後三ケ年を経た今日一家の支柱の帰途のみを待つて耐乏生活を続けて来た家族は、遂に遺家族となり又留守家族としての苦難を続けなければならない状態にある。従つて、これが援護と慰藉は一層徹底を期するべきであつて、この際未復員者給与法の改正をなすべきである。このための財政措置についての政府の所信を承りたい。