質問主意書

第3回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

在外同胞引揚促進についての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年十月二十一日

北條 秀一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   在外同胞引揚促進についての質問主意書

 第二回国会において衆参両院は在外同胞対策に関する重大決議をなし、残留同胞の引揚げが本年結氷期までに完了するように連合国当局に懇請したのであるが、既に結氷期も間近にせまつている今日、なお五十万人に近い同胞が海外に残留しているのであつて痛心にたえないところである。この引揚遅延の原因は日本政府の責任ではないことが明らかであり、九月中旬ソ連代表部においても引揚遅延が、ソ連の国内輸送事情によると言明されたと新聞は報じているが、共産党機関紙「アカハタ」には、引揚の遅延は輸送船がないとか、食糧がないとか等々日本政府の施策の不十分なることに帰因する旨屡々報導され、又一部巷間にも同じことが伝えられていることは遺憾である。これは政府が事実を事実として発表しないからである。本院の在外同胞問題に関する特別委員会委員北條秀一(緑風会)細川嘉六(共産党)浅岡信夫(民自党)は七月十四日より十六日舞鶴港の引揚施設調査のため派遣されたが、その調査の結果確認された点について以下記すから、これらを基礎として政府が現に実施しつつある引揚施設の全般的説明をされたく、且つ今後に処せんとする点を明示されたい。

一、舞鶴港には十三隻の引揚船が配船され、今春来常時五隻が就航し他の八隻は待機させられている状態を確認した。これらの待機船は二十四時間前に出航命令あらば何時にても出航し得るよう措置されてあつた。ついては現在各港配船の状況とその輸送能力は何れ位あるのか明らかにされたい。なお砕氷船の保有数、又は動員可能数と砕氷船が何時にても出航し得る用意あるか何うかを示されたい。

二、引揚船の乗組船員は何れも就航日数の少きために引揚遅延を憂慮し、もつと就航を多くし少くとも一ヶ月二航海はやりたいとのことであつた。引揚船の就航日の少ないことは何に帰因するのか。
 又徒らに待機船のみ多きは、国全体として好ましくないので、これらの待機船を他に転用することは出来ないのか。

三、大郁丸が入港し(七月十五日)引揚揚陸一時間後に船内を調査せるところ、船内は清掃され、食糧倉庫には三千人三日分の主食が残つており、更に一航海分の食糧があることを確認した。しかも大郁丸は二航海を終つたところであつたので、本船は主食積込当時には三航海分を積んでいた訳であるが、各船の主食副食物の積込状況は何うか。

四、舞鶴港貯炭場の引揚船焚料炭は七月十五日現在七、五〇〇トンの貯炭をもち、毎月四、五〇〇トンが到着していることを確認したが、現状如何。

五、大郁丸船長は、ナホトカ入港前日同船が二、五〇〇人乗船準備ありとナホトカ港宛打電しているが二、〇〇〇人しか乗船せしめられなかつた。各船とも同様の乗船能力を先方に打電しているのか。又打電しているとせば大郁丸の如き三、一〇〇人の収容力があるのだから、当然にそう打電すべきではないか。
 今日迄各船船長が先方に打電した乗船準備数と実際乗船数の比較を既往の事実に基いて示されたい。

六、引揚同胞乗船直後の食事と次回との二回は、七分粥としていることは、保健的見地から正しいと考えられたが、これは今日となつては適はしくないと思うが何うか。

七、七月十五日の大郁丸は、ナホトカ港より八五キログラムの郵便行のうを受托して帰つた。今日迄各船が受托した郵便物は、行のうにして何個、その重さ何キログラム、内容物たる通信は何通あつたのかを示して貰いたい。

八、引揚列車については、真の国民総意にもとづく歓迎歓待を行ふべきであるが、ともすると一部の団体が自らの宣伝等をせんとするような傾きのあることが見受けられた。
 これは取締りをしているとのことであるが、公平に各種団体を取扱う注意が必要であるが、実情について説明されたい。