質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第九十五号

内閣参甲第一〇一号
  昭和二十三年五月七日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員北條秀一君提出引揚農民の新規入植に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員北條秀一君提出引揚農民の新規入植に関する質問に対する答弁書

一 (イ) 開墾費の年次別所要額
年度別開墾面積
年度別開墾面積は変更されることがあるかも知れないが、現在は左の基準をとつている。
一 年二 年三 年四 年五年以降
開墾面積  四・〇反五・〇反三・〇反三・〇反一〇・五反
開 墾 費
反当単価内   訳入植者への開墾費補助
開 墾 費  五、四八五円建設工事費 一、六一三・三八開墾作業費の六〇%
開墾作業費 三、八七一・七二約二、三二六円

建設工事費の六〇%及び開墾作業費の七六%は労賃であるから入植者が労務者として出役する場合は更に労賃収入を見ることができる。

(ロ) 住宅及び共同施設建設費
一戸当補助及び融資額(但し年度区分はない)
種    別一戸当単価(円)
共同施設費融資金八、〇〇〇
住宅建設費融資金四一、六五〇住宅 四〇、〇〇〇
井戸  一、六五〇
同    補助金二〇、〇〇〇

(ハ) 営農資金
種    別一戸当単価
融 資 金四〇、〇〇〇円
現物融資額四八、二四五円

(ニ) 農家の家族数の基準及びその生活費基準
農家の家族数
家族人員四人
労力換算人員二人
消費単位三人

生活費基準
一 年二 年三 年四 年五 年
生 活 費二六、三四四一八、八六六一四、五五〇一三、九〇〇一七、〇二五

1 主食費は不足主食分の購入額のみを計上した。
2 五年以降の生活費は一定する。入植四年迄は開墾根株等により薪炭費を自給できるが、五年以降は薪炭費を計上してある。
3 経営が順調な場合には、四年度以降は営農収入によつて生活費を自給することができる。

二、二十二年度補助金及び融資金(一戸当単価)



 右表の通り二十二年度においては年度当初住宅関係補助金五、六四〇円であつたものを第二四半期以後一三、一二〇円に引上げ、住宅建設融資金も一〇、五〇〇円より二五、〇〇〇円に増額実施したので一戸当り住宅関係経費は三八、一二〇円となつている。更に営農資金の融資額一〇、〇〇〇円を加えると新規入植一戸当りの補助及び融資額は二〇、五〇〇円でなくて四八、一二〇円となつている。
 然るに二十二年度予算額では物価騰貴等により入植者を定着せしめることが困難と思われるので、二十三年度予算においては質問の一の回答に述べた通りの経費増額を関係当局において努力しているのである。

三、物価騰貴、食糧及び資材の不足等の悪条件の下での入植には相当多額の経費を要するので、一応答弁の一に述べたような基準による予算を計上している次第である。
 しかし現下の国内情勢を勘案するとき入植経費を可及的に圧縮する必要があるので種々検討中である。
 開拓団の要請額である一四〇、〇〇〇円案については種々前提条件があると思われるが、これが成否について検討中である。

四、終戦後の開拓事業においては当時における規則の不備、社会的事情等のため、種々混乱のあつたことは事実であるが、漸次整備されて来ている。引揚農家等の農業経験者の入植が優秀な成績を挙げていることは御意見の通りで、将来は適格者を厳選して引揚農家を最優先的に入植せしめる方針である。

五、引揚農家は無一物で帰還したのではあるが、貴重な開拓の体験を有し且つ入植の熱意も旺盛であるので、本年度は引揚農家を対象として入植せしめ、一日も早くその更生安定を図りたいと思つている。それで二十三年度においては満洲引揚開拓民の入植待機中の者一五、五〇〇戸、本年度内にシベリヤより帰還する者五、〇〇〇戸として小計二〇、五〇〇戸、樺太の引揚農家三、五〇〇戸と考え、合計二四、〇〇〇戸の新規入植実現に努力している。

六、(五)の回答で述べた通り本年度内シベリヤ帰還者中の入植希望者を一応五、〇〇〇戸と想定してその受入を考慮している次第であるが、その数が確定したならば更に入植受入について対処したいと考えている。

備 考
 前記の各項目中所要経費については内地における平均点とみなされる入植者に関して算定してある。