質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第八十六号

内閣参甲第八七号
  昭和二十三年五月四日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員宿谷榮一君提出農機具の生産及び生産資材並びに生産資金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員宿谷榮一君提出農機具の生産及び生産資材並びに生産資金に関する質問に対する答弁書

一、昭和二十三年における食糧確保のため国内生産上あらゆる方途を講ずる必要のあることは言う迄もないが、肥料、農機具その他食糧生産上不可欠の物資についてはその供給確保につき行政上特に主力を注ぐと共に重点の取扱いを行い、もつて遺憾なきを期する所存である。

二、昭和二十三年度の農機具用資材は鋼材二万トン、銑鉄一万トン等を手配しているのであるが、これは現下絶対必要と思われる食糧増産を完遂するための農機具用としては決して十分なる数量ではなく、鋼材としては約四万トンが必要であることは従来の資料に徴して明らかなところである。この点については農機具工業者が要求するものの中主資材も勿論であるが、副資材、例えばカーバイト、燃料、ゴム等の不足も生産に大きな影響を及ぼしているので、これら諸資材の跛行的状態を可及的に是正し、なお生産者の手持資材を十分活用して、総合的に農機具の生産増加を図る方針の下に、不足資材につき善処する考えである。

三、不良品の問題については、終戦直後の或る期間、一部転換工場等による粗悪品の流出のあつたことは事実であるが、最近は旧来よりの専門工揚の生産も回復し、新規工場の技術も向上熟練して来たため、次第にかかる不良品の横行を見なくなつた。殊に近時農機具に対する価格査定制度の励行を見ることになつたが、不良品に対しては相当低価を附しその生産を抑制する結果となつている。なお今後の問題としては製品検査の実施があり目下一部地方では府県或は業者団体等においてこれを実施しているが、現在検査制度の施行につき研究中で近く何等かの措置を講じたいと考えている。又粗悪品製造工場に対し直ちにその整理を行うことは上策と思われずむしろ資材割当等の調整、検査、技術指導、工場間の競争の刺戟等各種の行政上の措置によりその品質の向上を図り優良工場及び優良品の生産を若干でも増加せしめることが目下の需給関係から見て当面の先決問題と考える。しかして不良品の改良をおろそかにする工場が漸次競争場裡から脱落することが予想せられる。

四、最近農機具の生産確保のための融資問題が資材、電力等と同じくあるいはそれ以上に重要視せられて来たことは事実であり、過般来これが解決のため関係官民としばしば協議を重ねている次第であるが、今後共一層努力し各方面の協力により満足なる結果を得るまでこれを推進する所存である。しかして現在までのこれら対策として進捗中のものは概ね次の如くである。
(一) 融資順位の引上げ、日本銀行融資斡旋の優先及び一般銀行による貸出に対するいわゆる枠外許可の優先、復興金融金庫貸出の確保
(二) 農機具、工業者の信用力を綜合活用する目的をもつてその共同出資による一種の債務保証機関を設置し、その保証による一般銀行資金借入の容易化
(三) 統制配給品たる農機具の取引決済の方法として、最近通用を認めることとなつた商業手形通用の実施細目の設定
 なお、右に関し (1) 農機具生産業の融資順位については他の重要機械生産業との均衡上石炭肥料と同扱いにするは困難であるが、農機具配給資金については上順位とする。(2) 市中金融機関よりの借入は随意であり、(3) 復金よりの損失保証は今のところ考えていないが個々の場合に復金に折衝されたい。(4) 限度外貸出に現在の金融情勢に鑑み、一般に抑制しない考えである。