質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第七十七号

内閣参甲第七七号
  昭和二十三年四月二十七日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出治安と不良分子取締に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出治安と不良分子取締に関する質問に対する答弁書

一、国内治安は政治、経済その他社会状勢に依壌するところ極めて大きいものがあるが新しい警察制度の運用の良否によるところ亦極めて大きいのであります。
 広範囲に亘り、又は集団による犯罪の防遏、検挙について各警察相互間の緊密な連絡協助によつて初めて対処し得るものでありますから国家地方警察は自治体警察と密接な協調連繋を保ち国内治安確保のため警察の総力を投入し遺憾のない態勢に鋭意努力中であります。

二、不良分子の取締については戦後社会不安に乗じ疎開地跡戦災地等に簇生した露店等を根城に暴力的な集団を作り各種の犯罪を促す者が多くなつたことはお説の通りであります。
 犯罪手口の主なるものとしましては、他人の土地の不法占拠や飲食店、慰安所等を開店したものに対し挨拶がないからと因縁をつけ多額の金銭を喝取すると云うような類のものでお説のやうな無銭飲食、無料入場、無賃乗車に至つては数えるにいとまがない程であります。
 従来、この種暴力団取締の後に執つた措置について申上げますれば、昭和二十一年九月及昨年三月の二回に亘り全国一斉取締を行い、合計五万余名を検挙し更に昨年六月以降警視庁を始め多数の暴力団が存在すると思われる府県を督励し、継続的な取締を実施し、昨年十一月まで八千余名を検挙したのであります。その間ごろつき新聞、炭坑暴力団にも「メス」を入れごろつき新聞に於いては九二紙、炭坑暴力団においては一千九百余名を検挙し相当粛正することができたのであります。
 しかし全国的なこの種事犯の猖けつに鑑み一層取締の必要を感ぜられましたので昨年十一月これが一掃を見るまで継続的な取締を行うよう指令し実施中でありますが、その結果昨年十二月より本年二月まで既に一千五百名を検挙したのであります。
 その結果的屋、博徒等の集団の一部は遂に解散を声明するものも出て参るというように漸次取締の効果が現われつつあるのでありますが、遺憾ながら過般浜松事件のような事態の発生もあるように、社会状勢は依然としてこの種暴力団跋扈の温床を残しているのでありますから国家地方警察本部としては自治体警察と協力し今後一段と徹底した取締を行い、この種不良徒輩を根絶したい覚悟であります。

三、次に浜松事件の概要を申上ますと去る四月四日浜松市在住の小野組と朝鮮人(的屋、露店商)とが楽団の奪い合いより口論となり朝鮮人が小野方にピストルを所持して殴り込んだことより端を発して同日夜、市内数ケ所において双方約五十名が分散して挙銃を発射集団闘争をなし更に翌五日夜には双方が応援を求め約四百名が市内数ケ所において前日と同様な事犯が起きたのでありましてこの集団闘争の結果死者三名、重軽傷者十四名、その他相当の被害を出したのであります。
 この両日の事犯は、浜松市警察及び地区警察署の応援で一応鎮静したのでありますが、なお不穏な形勢にありましたので、浜松市公安委員より応援要請を受けた国家地方警察静岡県本部においては現地に警備本部を設け四百余名の警察官を以て検問所の強化巡察等を行い、事犯の未然防止に努めると共に既に発生した犯罪の容疑者の検挙、押収、捜索等を行い合計十九名を検挙したのでありまして、その後は平穏に帰したのであります。
 本件を顧り見まして国家地方警察と自治体警察の緊密な連繋が必要と認められますので、今後この種事犯の措置について万全を期するよう万般の配意をいたしている次第であります。