質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第七十六号

内閣参甲第七六号
  昭和二十三年四月二十七日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出小学生にミルク配給後統計に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出小学生にミルク配給後統計に関する質問に対する答弁書

一、連合軍総司令部当局の絶大な厚意と御援助とによりまして、全国の小学校児童に対し学校給食を普及奨励いたすことになりましたのは一昨年(昭和二十一年)の十二月でありました。文部省におきましては直ちに学校給食実施計画をたて、政府から物資を配給する対象を一先ず都市学童の範囲とさだめまして、本施設による教育の万全を期することになりました。その結果、全国都市の小学校におきましては、本施設の設置を感謝歓迎するところとなり、日ならずして二百数都市全学童三〇〇万人に一週二回以上の学校給食が実施されたのであります。文部省といたしましては、学童一人に対する一回の給食内容を平均一八〇カロリー程度とするよう希望いたしたのでありますが、何分にも政府配給食糧のみをもつていたす場合は、一食平均一〇〇カロリーを給食するのも困難であるというのが、当時の実情でありました。司令部当局におかれましては、右のように学校給食の普及の速かな成績にもかかわらず給食内容が貧弱である実情につき種々御高配の結果、更らにこの施策に拍車を加える意味から、昨年八月学校給食用として多量の脱脂粉乳が放出されることになつたのであります。学童一食宛約二十五瓦宛のこの粉乳の加配は熱量として九〇カロリーの給食内容の増量を意味し、その放出総量一万二千トンは、咋年九月から本年六月までの十ケ月間にわたり、都市全学童と動物性蛋白質源に乏しい一部町村の学童達とに対し、都市には毎週四回以上、町には毎週三回以上の給食が実施できるという、文部省の学校給食拡充計画案を可能ならしめたわけであります。今日、政府からの配給物資によるミルクを中心とした約四百七十五万人の学童に対する学校給食の実現は、この拡充計画に基いて行われているのであります。
 かようにして、一昨年十二月から今日まで約一ケ年余実施いたした学校給食の学童に及ぼしました教育的効果は、学童の体位向上の点から致しましても、精神面に与えた効果から考えましても実に顕著な成績があがつたと思われるのであります。
 先ず栄養補給と学童体位との関係をもつとも端的に知るには学童の体重の推移状況を統計的に観察することが、一般に妥当な方法とされております。そこで文部省では学校給食を実施いたしました学校からその学童の体重を毎月計測して報告するよう各府県へ指令いたしてあります。すなわちこの一年間学校給食が実施されました都市学童の体重は、戦争以来昭和二十一年度迄減少の一路を辿つたのでありますが、この学校給食を実施いたしました昭和二十二年度を境といたしまして急激な昇向を開始したのであります。この現象は一概に学校給食のみに起因するとは申されないとしても、昨年度においてほとんど給食を十分出来なかつた農村学童や、新制中学校生徒の体重が今日にいたるも依然として停滞あるいは低下を示しておりますのと比較して、学校給食の効果を相当大きく評価すべきであろうと思います。その他、学童の健康状態も増進した実例として次のような事例につき各地から報告がまいつております。
(イ) 学童が明るく活動的となつた。
(ロ) 風邪欠席者が少くなつた。
(ハ) 凍傷患者が殆んど見られなくなつた。
(ニ) 偏食矯正の効果があらわれ、栄養要注意児童が減少した。
 次に、学校給食は学校における全教科の教授に利用せられるべき教育施設として、重要視されておりますが特に学校における衛生教育の実地教育の面で多大の効果をもたらしつつあることや、更にまた一般家庭の食生活の改善に及ぼす意義等は、将来一層強調せられてゆくものと存ぜられます。したがつて文部省では、本年九月以降におきまして、現在の学校給食計画を更に大幅に拡充して、小学校は勿論新制中学校に至るまで、即ち約一千六百万人の義務教育対象の全生徒児童に学校給食の恩恵を徹底いたすよう新規計画案をたて現在総司令部当局をはじめ関係各省に対し種々御協力方を強く要請いたしておる次第であります。

二、文部省におきましては、学校給食施設の管理、すなわち学校給食に必要な食品、食品給与の指導方法、給与食品の栄養価の算定、学校給食の教育管理、給食用諸物資の取扱、学校給食実施後の報告、給食実施後の学童健康状態の判定等のことにつき、つねに事実に則応した資料を連合軍当局に機会あるごとに提出して、その御指導と御支援をお願い致しております。昨年十二月十一日はこの度の学校給食の普及奨励につき文部省が全国に通達いたしましてから恰度満一箇年に相当いたしましたので、常にお世話いただいている総司令部関係官の御参集をお願い致しまして文部大臣より一箇年間における経過報告を致すとともにその御支援に対し万腔の感謝の意を表しましたところ、総司令部代表として、御出席のサムス大佐より、司令部としてはこの一箇年の好成績に鑑み、本二十三年度においては義務教育対象約千六百万人の全学童に対して給食範囲を拡大し、その内容も一食六〇〇カロリーを標準とする充実した学校給食の実現に支援を惜まないとの力強い御挨拶がありました。先刻お示しいたしました文部省の本年度における学校給食拡充計画も、この時のサムス大佐よりの示唆により只今着々として準備が進められておるわけであります。しかしこの計画実現のためには莫大な食糧、資材及び資金等の問題が解決されなければなりませんので、国内的にも本事業に対する正しい理解と強力な支持とが要望される次第であります。全国各都道府県における本事業に対する感謝と反省とは、十二月二十四日を学校給食紀念日といたしまして各地各学校において、地方軍政部関係者、学童、教師、父兄、その他関係者によつて有意義に展開されましたことは、すでに当時の各新聞紙上で御承知のことと存じます。
 また学校給食実施後の学童体重推移状況統計等はその他の学校給食関係資料とともに「日本における学校給食計画の概要」として最近、総司令部当局から国際連合(ユネスコ)当局に伝達せられ、それは今後の我が国における本事業発展のため役立つよう取計らわれた総司令部当局の御好意であると承つております。なお文部省におきましては、本事業関係の各種の資料を各都道府県から蒐集いたしまして、明細なる全国的統計等も調整の上、漸次発表いたしたいと存じますので御諒承のほどおねがいいたします。