質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第六十五号

内閣参甲第六六号
  昭和二十三年四月二十七日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員小川友三君提出集団犯罪に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小川友三君提出集団犯罪に関する質問に対する答弁書

一、御質問の御趣旨の様に現下吾が国の治安状況は誠に憂慮すべき状態でありまして、都市、農村の区別なくその犯罪は単独より集団へと兇悪化している状況にあります併しながら最近に至りましては必ずしも集団犯罪が量的に増加しているとは云い難いのでありまして試みに昨年一月中における全国各府県の集団犯罪の発生検挙状況と本年同期とを比較してみますと、昨年の発生は九四四件でありまして検挙は九六九件一、七四四人があり本年は発生五三九件検挙五三四件となつており発生では四〇五件の減少を示しているのであります。
 更に最近における集団犯罪の事例と致しましては、宮城県仙台北警察署と警視庁とが協力検挙した十数名からなる列車内集団強盗、又は警視庁で検挙した強盗部隊等その重なるものであります。
 一方農村においても漸次集団的犯罪が発生する傾向にありまして所謂買出部隊が変じて集団窃盗を敢行した事例も少くありまりません。
 又最近青森県で十数名一時の集団土蔵破りを検挙致しましたが、これ等は農村における特異犯罪でありまして、この方面に対する防犯対策の必要も痛切に感じられる現状であります。
 次にスリ犯について申上げますがこの犯罪は、列車、又は電車内において、敢行されるものが多く、これにつきましては各府県を督励して移動警察の適切なる運営によりまして着々その成果を収めておる次第であります。
 試みに昨年度中全国各府県の移動警察が取扱つた犯罪総件数を見ますと三一、四六三件中実にその一割以上三、二九五件がスリであります、検挙件数において必ずしも満足すべき数字ではありませんが今後国民各位の御協力によりましてこの方面にも一段と警察力を集注し以てこの種事犯の予防検挙に最善をつくしたいと考えております。
 最後に集団犯罪の予防検挙につきまして各府県においてはその実状により武装警察官による列車警乗の実施又は二人乃至数名よりなる武装警察官の警邏、巡察の実施及び検問所の設置等あらゆる手段を講じており事件発生に当つては国家、自治体両警察が緊密なる連絡協調一体となつて犯罪検挙に努めるとともに最近各地に結成されつつある民間の発意による防犯団体等と密接な連繋のもとに確信をもつて治安維持に邁進致しておる次第であります。

二、集団犯罪又は突発事案に対して、警察能率増進と、警備力維持の面から警察長を中心とした兵舎式合宿又は警察官の官舎等の設置は極めて緊要と考えるのでありますが現在の如く国家及び地方財政が逼迫し警察運営上直接必要な経費についてさえ極度に切りつめねばならない状況でありましてなかなか宿舎設置費を得る迄に至らないのが実情であります。
 幸い地方におきましては地元有志各位の発意により寄附を得る等の方法で住宅を建設し、これを利用しておる向もありますがこれにも限度がありまして、一般的には差当り警察寮を拡充して独身警察官を原則的に居住させこの人員をもつて突発事案等に備えているような現状であります。
 警察官の宿舎の問題につきましては今後共各位の御協力によりまして国家ならびに地方財政の許す範囲でその実現を期し以て警備力の維持と警察能率の増進に資し度いと考えております。