質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第五十四号

内閣参甲第五五号
  昭和二十三年四月十三日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員岡村文四郎君提出作物報告事務に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岡村文四郎君提出作物報告事務に関する質問に対する答弁書

北海道作物報告事務に関する質問に対しお答えする。

(イ) 二十二年度に要したる経費概算及び人員

 先ず北海道作物報告事務所の経費につき説明する。二十二年度支払予算は一〇、六八一、九五二円その内訳は産業経済費、農業費、調査及研究費六、六一七、四九〇円、行政共通費諸支出金四、〇六四、四六二円である。次に人員につき説明する。北海道作物報告事務所に割当てた定員は二級官四七名、三級官一四二名、嘱託雇傭人二八七名計四七六名である。因に全国の定員は二級官八〇四名、三級官二三九六名、嘱託雇傭人五〇四三名である。
 次に充員状況につき述べると北海道はその特殊事情により非常に遅れていて、三月末迄に発令せられたものは、二級官二名、三級官二四名、嘱託六名、雇傭人一五五名計一八七名であるが、この外に任用手続中のものが相当数居る。

(ロ) 二十二年度の調査及び研究の概要

 作物報告事務所は、農作物特に主要農作物の収穫高を調査するものであるが、昨年四月より設立準備を始め、昭和二十二年度産米及び甘藷の収穫高調査から活動を開始した。しかし全国的に見て未だ陣容が整つていなかつたため、この調査は食糧事務所との共同責任において行つた。秋播の麦から作物報告事務所単独で調査している。
 調査の内容を更に具体的に述べると、八月一日に米及び甘藷を栽培するものから作付面積を申告させ集計した。しかし現在のような食糧事情の下においては農家の申告をその儘鵜呑みにはできないので、米については最近諸外国で発達した少数標本理論を用いて農家の申告と実際の面積との間にどの位の開きがあるかを調査した。各府県において三%、全国において一%の誤差の範囲内で九五%の確率で正確な数字をつかむためには、各府県とも二十八ケ町村を選びその選ばれた町村については十五筆の耕地を実測する必要があるとの決論を得たので、各作物報告事務所において中央の指示に基きその通り調査した。しかしその結果得た数字には上下に三%の幅があるので諸々の条件を考慮してその範囲内で各都道府県の作付面積をきめた。しかしこの調査では申告された耕地のことしかわからない。更に故意又は過失により申告の洩れた耕地を調査する必要があるが、人員予算の関係上調査できなかつたので、色々問題はあると思うが各府県とも一・五%位の脱漏があるものとしてその面積を加算した。このようにしてきめた作付面積から被害による収穫皆無面積を差引いて収穫面積を出した。
 甘藷については残念ながらこの種の調査を行い得なかつたので諸種の資料をもととして収穫面積を決定した。
 次に収穫高を決定するためには反当収量を調査しなければならない。生育状況を米については八月一日、八月二十日の二回、予想収穫高を米については九月二十日、十月二十日の二回、甘藷については九月一日の一回調査した。更に坪刈、坪堀の方法により推定実収高を決定した。
 北海道について調査の結果を申し述べると収穫面積は米一三二、〇六八町、甘藷六七町推定実収高二、〇〇七、一六七石、甘藉七九、〇〇〇貫である。
 本年二月二十日には麦の作付面積の申告を農家より求め、米に準ずる方法で目下実測調査を全国的に実施しているが、北海道は春播麦が大部分であるので五月に調査をすることになつている。
 作物報告事務所は以上の調査の外気象感応試験、作況試験を行つている。
 気象感応試験とは気象条件と作物生育との相互関係を明らかにし、これに基き出来るだけ早期に且確実に作物の収穫高を予測し調査及び行政を計画的に行うことの出来る資料を作るための基礎試験であり、作況試験とは気象、耕種条件、品種等の凡ゆる綜合要素と生育収量との相互関係を見出すと共に作況決定の資料を作るを目的とする試験である。北海道においては麦の気象感応試験作況試験を農業試験場本場北見支場及び十勝支場で実施中である。
 昭和二十二年度の調査に当り僅かな人員で北海道の如き広大な地域に亙る調査が実施できたことは道庁、農業会その他各方面の絶大な御援助に負うところが多いと厚く感謝する。
 北海道は特殊地域であるのでその調査にも他の府県と異なる方法を用いなければならぬと考えて目下検討中である。
 作物報告事務所は調査に科学性を与え供出の責任を公平に農民に負わせることを目的として生れたものであり、作物報告事務所の職員は、その職務の重大性を自覚し日夜その任務の達成に努力している。しかし何分設立後日も浅く定員も二ケ町村に一名位しかおらない実情である。農林省においても供出の基礎となる収量を把握する機関として、その健全な発達を図るべく努力しているが、その重要性に鑑みて今後益々御援助下さるよう御願いする。