質問主意書

第2回国会(常会)

答弁書


答弁書第五十二号

内閣参甲第五三号
  昭和二十三年四月六日

内閣総理大臣 芦田 均      


       参議院議長 松平 恒雄 殿

参議院議員中野重治君提出財団法人私立学習院に関する質問に対する、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中野重治君提出財団法人私立学習院に関する質問に対する答弁書

一、財団法人私立学習院の寄附行為及び氏名、金額

(別紙)
     財団法人学習院寄附行為

   第一章 総則
第一条 本財団法人は学習院と称する。
第二条 本院は学習院学則に則り高潔なる人格と確乎たる識見とをもつて人類と祖国とに奉仕する男女人材を育成するを本旨とし初等教育より高等教育に亘つて一貫した教養を与へることを目的とする。
第三条 本院は事務所を東京都豊島区目白町一丁目一〇五七番地に置く。

   第二章 役員
第四条 本院に院長、理事、監事、評議員、顧問及賛助員を置く。
第五条 一定の資格に基いて役員となつた者は其の資格の消滅と同時に退任する。
第六条 補欠によつて役員となつた者の任期は前任者の残任期間とする。
第七条 任期の定められた役員と雖も重任して差支えない。

   第三章 院長、理事及理事会
第八条 院長は評議員会が選挙し主務官庁の認可を経るものとする選挙手続は別に之を定める。
第九条 院長は本院を代表し其の事業を統括し教職員を任免する。
 院長は教育上のことに関しては教員の意見を求めるものとする。
第十条 本院に院長の外理事五名以上二十名以内を置く理事の任期は三年とする。
第十一条 理事は本院の出身者、本院学生の父兄、本院教職員其の他関係者の内から別に定める所によつて評議員会が選挙し主務官庁の認可を経るものとする。
第十二条 理事は理事会を組織し本院経営の一切の責に任する。
第十三条 第三十九条、第四十三条、第四十四条、第四十五条、第四十七条、第四十八条、第四十九条に於て規定するものの外理事会に附議すべき事項は左の通りである。
 一、本院の経営方針に関する事項
 二、評議員会に附議すべき事項
 三、本院の業務に関する重要な諸規程の制定及改廃に関する事項
 四、其の他院長に於て理事会の決議を必要と認めた事項
第十四条 本院に次長を置くことができる次長は理事の内から院長が之を委嘱する。
第十五条 次長は院長を輔佐し本院の教育事業の運営に当り院長事故ある場合は其の職務を代行する。
第十六条 理事の内二名以内を常務理事とし院長が之を委嘱る。
 常務理事は院長を輔佐し本院経営の事務を掌理する。
第十七条 理事会は院長が之を召集し院長が其の議長となる。
第十八条 理事会は二分の一以上の出席を以て成立し特に定める場合を除くの外議事は出席者の過半数を以て決する。
 可否同数の場合は議長が裁決する。

   第四章 監事
第十九条 本院に監事五名以内を置き其の任期は三年とする。
第二十条 監事は評議員の内から評議員会が選任する。
第二十一条 監事の職務は民法の規定に依る。

   第五章 評議員及評議員会
第二十二条 本院に評議員六十名以内を置き其の任期は三年とする。
第二十三条 評議員は評議員会を組織し本院の重要事項に参画する。
第二十四条 評議員会に院議すべき事項は左の通りである。
 一、資産の運用及其の管理方法
 二、不動産及重要なる動産の処分
 三、重要なる諸規程の制定及其の変更
 四、本院の解散
 五、院長、理事、監事の選挙
 六、其の他院長において評議員会の決議を必要と認めた事項
第二十五条 評議員は左の各号により選任せられる。
 一、本院の出身者の団体の選定する本院の出身名 十六名
   但し男子女子は夫々出身者の数に比例した数を占めるものとする
 二、本院学生の父兄中より選挙せられた者 十六名
 三、別に定める所により本院教職員中より選挙せられた者 十六名
 四、本院に顕著なる功労あり又は本院の教育事業に協力を求むるため評議員会において適当と認められた者 若干名
第二十六条 評議員会は毎年少くとも二回之を開くものとし院長が之を召集し議長は互選による。
 三分の一以上の評議員から要求のあつた場合には評議員会を開くことを要する。
第二十七条 第十八条の規定は評議員会に之を準用する。

   第六章 顧問
第二十八条 本院に顧問若干名を置き院長が之を委嘱する。
第二十九条 顧問は本院の重要事項に関し院長に意見を述べるものとする。

   第七章 賛助員及賛助員会
第三十条 本院に対し一定金額以上の資金又は一定価格以上の物件を寄附した者を賛助員とする。
第三十一条 賛助員は賛助員会を組織し左の事項につき本院の運営に参画する。
 一、不動産その他重要な財産の処分
 二、本院の解散
第三十二条 賛助員会の議長は互選による。
第三十三条 第十八条の規定は賛助員会に之を準用する。

   第八章 学制
第三十四条 本院に初等科、中等科、高等科及大学科を置く。
 必要に応じ前項の科の外に科を置き又は前項の科を分割することを得る。
 各科の外に図書館その他の附属機関を置く。
第三十五条 各科に科長を置く。
 科長は院長の命を承け各科の教育を統括する。
第三十六条 学則は別に之を定める。

   第九章 資産
第三十七条 本院の資産は皇室から下賜された資産出身者、父兄その他からの寄附金及寄附物件並に授業料その他の収入から成る。
第三十八条 本院の資産は之を基本財産及運営資産に区別する。
第三十九条 基本財産は国債その他確実なる預貯金、有価証券及不動産五百万円以上を以て之に充てる。
 基本財産の設定及変更は理事会三分の二以上の同意により且評議員会の議決及主務官庁の認可を経ることを要する但し基本財産とする条件を以て為された寄附金其の他の財産を基本財産に編入する場合はこの限りでない。
 基本財産から生する収入は之を運営資産に繰入れる。
第四十条 運営資産は確実なる金融機関に対する預貯金国債その他確実なる有価証券の保有等確実且有利なる方法により運営する。
運営資産から生ずる収入は原則として経営費に充当する。
第四十一条 基本財産及運営資産は院長が第四章に規定された監事の監査に従つて保管の責に任ずる。

   第十章 会計
第四十二条 本院の経費は授業料等の経常収入並に運営資産及運営資産より生ずる収入を以て支弁するを原則とする。
第四十三条 本院の予算は毎会計年度開始前理事会の議決を経た上之を評議員会に提出しその承認を経るものとする。
第四十四条 本院の決算は翌年度始めに理事会の議決及監事の承認を経た上評議員会に提出しその承認を経るものとする。
第四十五条 不動産その他重要な財産の処分は理事会三分の二以上の同意により且評議員会及賛助員会の議決を経るものとする。
第四十六条 本院の会計年度は毎年四月一日に始まり翌年三月三十一日に終る。

   第十一章 雑則
第四十七条 本寄附行為の改正は理事会三分の二以上の同意並に評議員会三分の二以上の同意により且主務官庁の認可を経ることを要する。
第四十八条 本院の解散は法定の場合の外理事会、評議員会及賛助会の議決及主務官庁の認可を経ることを要する。
第四十九条 本院解散の場合には残余財産は理事会、評議員会及賛助員会の議決により主務官庁の認可を経て処分する。

   附 則
第五十条 従前の学習院及女子学習院の教育を宮内省から本院に引き継がれる期日は別に定めることとし之に至る迄の間本院の財産中その教育に必要なものはその使用に供するものとする。
第五十一条 本寄附行為中本院の出身者とあるは従前の学習院及女子学習院出身者を含むものとする。
第五十二条 第二十五条第四号に本院とあるは従前の学習院及女子学習院を含むものとする。
第五十三条 第十一条及第二十五条第二号に「本院学生」第十一条及第二十五条第三号に「本院教職員」とあるは本院設立より第五十条の期日に至る迄の間は夫々「従前の学習院及女子学習院学生」「従前の学習院及女子学費院教職員」とする。
第五十四条 本寄附行為は昭和二十二年三月三十一日より之を施行する。
第五十五条 本院設立の時における理事及監事は左の通りとしその任期は第五十条の期日を以て満了するものとする。
院長安倍能成、理事 細川護立、後藤一藏、秋元順朝、明石元長、湯河元威、東ケ崎潔、淺野安子、芦田均、田島道治、木破武夫(次長)、鈴木謙一郎、富永惣一、水田直昌(常務)、監事小山直彦、三島通陽、渡邊武、鷹司信輔、長尾欽彌

一、役員氏名

院  長  安 倍 能 成
理  事
細 川 護 立 後 藤 一 藏 秋 山 順 朝 明 石 元 長
湯 河 元 成 東 ケ 崎  潔 淺 野 安 子 芦  田   均
田 島 道 治 三 谷 隆 信 三 島 通 陽 肝 付 兼 英
徳 大 寺 公 英 櫻 井 和 市 金 子 彦 二 郎 井  上   敏
高 橋 敏 子
常務理事
水 田 直 昌 富 永 惣 一
監  事
小 山 直 彦 渡  邊   武 鷹 司 信 輔 長 尾 欽 彌

財団法人学習院寄附金
金    額寄附者氏名備           考
一三〇、〇〇〇中  澤   壽
五〇、〇〇〇原   邦  造
三〇、〇〇〇小 島 仲 三 郎
三〇、〇〇〇池 田 朝 次 郎
三〇、〇〇〇塩 原 又 策
二〇、〇〇〇夏 目 善 次 郎
計   二九〇、〇〇〇
(注) 外に金一万円以下の寄附一、五五四件
合 計    三、〇四一、〇九九円五〇銭

一、三月二十九日私立学習院の卒業式に天皇が皇后その他の皇族を伴つて出席した理由

 私立学習院の卒業式に、天皇、皇后両陛下及び三笠宮殿下が出席せられたのは、学習院が御母校である関係並びに皇太子殿下始め親王、内親王が御就学になつているので父兄として出席せられたものと存ずる。

     卒業式における天皇の御言葉
 本日茲に母校の卒業式に臨み感憾深きを覚える。今や学習院は時代の推移に対応して新発足の途についたのである。学校の前途には幾多の難関も予想せられるのであるが、関係諸子の努力によつて之を克服し光輝ある新歴史を創造することを期待すると共に過去百年に亘つて涵養せられて来た学習院のよき伝統は益々之を発揚して以て祖国再建に寄与せられることを望んで已まない。

     文部大臣(代理)が卒業式に臨んだ理由
 私立学習院卒業式は高等科、中等科、初等科合同で挙行せられたので、文相(文部次官代理出席)は所管学校の関係から、臨席したものである。
 尚卒業式には学校から申出があつた場合は卒業生に対する祝賀のため事務上支障なき限り出席するようにしている。

   文部大臣祝辞
     学習院卒業式祝辞
 本日天皇皇后両陛下臨御のもとに本院高等科及び中等科卒業証書授与式を挙行されましたことは卒業生諸君の無上の光栄であるばかりでなく私どもといたしましても深く感銘するところであります。
 終戦以来いつしかここに二年半余りの歳月が立ち国民大衆の生活にも次第に秩序と落着きを取戻してまいつたのでありますが、新日本建設の本格的な営みはむしろこれからと申さねばなりません。今日政治と言わず経済と言わず、教育、宗教、学術、文化その他あらゆる社会生活の面において、われわれの体験するところは極端な破壊につづく永遠の建設であり、忍苦と耐乏の連続でありますが、この試練に堪えぬくことによつて、初めて祖国再建の道が開かれるのでありまして、そこにはいささかも妥協や逃避の余地がないのであります。われわれはこの冷厳なる現実をしつかりと認識して、あくまでも自主的な心構で本務の遂行にあたらねばなりません。とりわけ次の時代を継承する若い人達の熱と力とに期待するところは最も大きいのであります。
 卒業生諸君は、本日この光栄の日を迎えて深い感動とともに前途に対する希望に燃えていられることと存じます。申すまでもなく諸君は本院が新しく改組された最初の卒業生であり、同時にまた創立以来百年の輝かしい歴史をもつ本院の出身者として、重い社会的責任を荷う方々であります。諸君の多くは更に進んで高等の学を修められることでありましようが、何れの方向に向われるにせよ、改造期にある今日の社会情勢から見て、前途はひとしく狭き門であり、いばらの道であることを思わねばならないと考えます。私は諸君が男子も女子もよく自己の責任と地位とに深く思をいたされ、時局に対する正しい認識と確固不動の信急とを堅持して人格の完成につとめ以て本日の光栄に答え、新日本の将来に大きな寄与をいたされるよう切望に堪えません。
 ここに卒業生諸君の前途を祝福し、今後の精進に期待して本日の祝辞に代える次第であります。
    昭和二十三年三月二十九日
文 部 大 臣

一、都知事が卒業式に臨んだ理由

 安井都知事としては今回の卒業式は学習院が管下の私立学校となつてから第一回のもので、この機会に同校の民主的な運営を視察しておきたいと思つたためである。

一、都知事が卒業式でなした祝辞の内容

 当日はつぎのことをごく短時間で演述した。
 「都では職員の給与問題につき労働争議がおきていて都民にもすくなからぬ迷惑をかけている。この解決は焦眉の急を要することで私も奔命に努力しているが、そのため祝辞をしたためて来る暇がなかつた。
 卒業生諸氏お目でとうと心からお喜び申しあげるとともに前途の健康をお祈りしてやまない。」