質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第百四十七号

野鍛冶業に対する資材配当調査、工場食糧加配並に作業衣特配に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年六月二十五日

宿谷 榮一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   野鍛冶業に対する資材配当調査、工場食糧加配並に作業衣特配に関する調査質問主意書

 農業生産力の増大確保の実が挙らなければ、国民生活の真の安定も経済復興も成り立ち得ないと思う。
 ついては全国の農業生産地帯に普く所在している野鍛冶業(鍛造小農具製造業)は農村内に一ケ所又は、二、三ケ所あり、その数は全国で凡そ参万余工場はある。これ等の野鍛冶業者は、鍬、鎌、斧、鉈等を自己の町村の内外近臨の夫々の田畑の質、状況に応じ、その土地土地に適合する形状又は性質の物を一ケ一ケ調製して夫々農家個々の作業に合致した物を供給している。これ等野鍛冶の特異性は土地土地の農業と共に起りその村の農業と共に生長発展してきた。従て野鍛冶業者の造り出す小農具は特別なる伝統的技術であつて、野鍛冶業者でなければ断じてなし得ない独特なものがあるのである。
 従て農業と共にある野鍛冶業の存在意義は全農家にとつて一日も欠くことの出来ない重要なものがあると共に恰も製鉄業における石炭、電力にも比すべき程で又それ以上の重要な地位にあることは今更多言を要しないのである。即ち農業生産の基底であり、力であるからである。
 然るにこれに対して従来政府は非常に軽視しており、充分なる理解と認識とを有してをるのかどうかを疑わざるを得ないのである。
 例えば資材、副資材の点、作業衣の点、食糧の加配等の事に関し、いさゝかも考慮が払われていない様に思われる。尤もこの中資材は二十二年度においては若干の配当はあつたが、全国各工場には行き亙つていない。又二十三年度の第一・四半期分も工場個々に未だ配給されていないのではないか、従つて農家の需要に事を欠き農業生産に非常な支障を来さしめている現状である。
 若し中央官庁において相当量の割当を行つたとしたなれば、出先官庁が野鍛冶業に対する認識が不充分のため軽視して他の工業部門に振り向けているのではないかと考えられるふしがある。よつて中央官庁が地方商工局別に割当をなす場合は府県別の各工場に行き亙るように割当の主旨方針を充分に徹底させる事が必要であると思う。
 ついては二十二年度及び二十三年度第一・四半期及び第二・四半期の都道府県別の割当数量の詳細、並びに二十三年度第三・四半期及び第四・四半期の資材、副資材の割当予定計画数量の詳細を速かに調査答弁せられたい。
 次に野鍛冶業の作業は他の労働に比し筋肉労働中最も程度の高い労働である。作業工程中には伸鉄又は鍛錬のための鍛造作業が最も多いから一貫目、二貫目もするハンマーを振り上げ振り下ろすというこの作業は容易なものではないので、肉体の疲労消耗度は非常に高い。殊に火熱を伴う作業であるから肉体消耗は一層はげしいものがあると共に作業衣の消耗も亦非常に高いのである。
 しかるに野鍜冶業は国家的重要な地位にあるにも拘わらず、その業体が小さく、非常に地味な存在であるため、総ての点で常に不利な立場に置かれ顧みられないのである。
 故に政府はこの際野鍛冶問題を一層重要視して、速かに食糧の加配と作業衣の特別配給の措置を行うべきであると信ずるが、これに対する政府の所信、並びに過去の配給実績があるなれば時期別並びに都道府県別の詳細を併せて答弁せられたい。
 勿論食糧も作業衣も不足の際であるから、この取扱いには相当困難であると思うが、しかし重要産業の事業場には例外なく多少に拘わらず配当せられておる事実よりみて野鍛冶業者に対しこの際に何等の措置をもなさないとすれば余りにも不合理であると考えるから一般重要産業部門の中に入れて計画配給すべきであると思う。