質問主意書

第2回国会(常会)

質問主意書


質問第八十六号

農機具の生産及び生産資材並びに生産資金に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和二十三年四月二十四日

宿谷 榮一      

       参議院議長 松平 恒雄 殿



   農機具の生産及び生産資材並びに生産資金に関する質問主意書

一 政府は昭和二十三年度食糧一割増産を発表しこれが完遂には相当の用意と覚悟を以てその成功を期しているものであろうと信ずる。
 わが国の食糧事情よりして一割の増産は勿論それ以上の増産をなし遂げたきことは国民の斉しく念願して止まないところであろう。故に政府においてもこの目的達成のためには最大の努力をなさねばならないことは多くいうを要しない。
 政府は食糧生産を担当する全国農家に対して生産上に必要なる有効な助力と援助とを十二分に与えてこそ増産の目的達成が期待できるのであるが若し生産に必要なる措置に欠くるところがあればけだしそれは農家に与える影響は重大なるものがあると考えなければならないがこのことに対し政府は如何なる方策を実施し又実施せんとするか。

二 食糧の生産と農機具肥料農薬等の生産資材とは密接不可分の重要性を有することはいうまでもない。故に政府においてもこの生産資材の中農機具について二十三年度は凡そ鋼材一万八千屯銑鉄九千屯木材百万石により二十二年度の二倍余の増産計画を樹て既にこれに対して一部生産の手配をなしつつあるが本員の調査研究するところによれば以上の資材量を以て二十三年度の食糧増産の目的を現実化することを期待するのは非常な無理があると考えられる。ついては資材不足の事情下において相当困難であるとは思われるが食糧増産ということは現下の諸情勢からみて絶対的なものと考えるから他産業への割当を多少圧縮させても農機具の資材の増加(最少限度鉄鋼において一万屯以下之に倣う)を計つて食糧増産を強行すべきであると考える。
 従つて農機具の生産増量の基礎的考え方は鉄鋼の生産量より割り出すべきでなく食糧増産の面に基礎を置いて考えるべきであると信ずるが政府の所見如何。

三 農機具に関しては政府が製造計画を樹て生産と配給の責任をとつている建前上農村への配給については優良完全なるものを配給しなければならないと思う。しかるに戦後にわかに農機具製造の増加に伴い不良農機具も大量に生産された。之が為農家は多大の迷惑と損失とを蒙つた。最近不良品の製造工場も優良品を製造する様になりつつあるがまだまだ相当量が市場に流れているがこの点に関し製造工場に対し充分なる指導と監督が必要ではないか。
 殊に之等不良農具が市場に相当見受けられるために一面農機具は間に合いつつありやの感を懐かしめるけれども之等は農機具らしきものであつて農家の信用する真の農機具として完全なる性能を有するものではない。農家の欲する農機具の不足は切実なものがある実情である。
 不良品製造による資材の無益の浪費と農家の蒙る損害は重要視すべきものと思うがこれに対し政府においては自然の整理を待つのか又は積極的に整理せんとするのか後者なりとせば如何なる施策をなしつつあるや。

四 農機具は需要において季節性を強く有するもので生産上必要な時期に農家の欲する資材が配給されなければ食糧生産に支障を来たすことは当然である。
 然るに農機具工場の生産状況は食糧増産計画遂行と一致しない状況にあることは誠に憂慮に堪えないものがある。農機具製造工場においては二十二年度下半期から資材、労賃、諸経費等の高騰により生産資金の手づまりを生じ生産が困難であつたが手持資材等を活用し且つ金融機関よりも信用限度いつぱいの融資を仰いで何とか製造を継続して来たが本年度に入りこの困難は一層深刻なものになつてきて今日では既に生産維持の見透しが困難なる現状にて殊に最近においては政府の割当資材購入資金の手配にも困窮を来している。故に農機具製造業者はこの事を衆参両院に対して請願書を提出してをり本員にも多数の陳情がある事情である。又過半来安本、商工、農林諸省の事務当局とこの打開策につき折衝を重ねたということであるが到底この事だけではこの対策の進展を見なかつた。
 この問題は農機具工場の維持上の問題に止まらず食糧生産の問題と直結している重大なる事であると考えるのである。
 政府において生産の責任をとつている以上農機具の生産確保の点に就ては政府において生産上支障の無い様に措置しなければならないと信ずる。
 就ては農機具緊急増産対策を確立すると共にその一環として先ず最大の生産隘路となつている生産資金の打開のために左の方法を実施する意思なきや。
(1) 金融機関の農機具生産資金に就ての取扱は肥料、石炭と同等の順位を設定すること。
(2) 政府製造指示を行う農機具工場に対する農機具生産資金の貸出に就ては一般市中の金融機関(夫々工場の取引銀行)をして貸出の取扱をなさしめること。
 これは農機具工場は大小複雑の企業であるのと全国に数百社散在しているので復興金融金庫が直接取扱をなすことは時間的にも技術的にも困難であろう。故に夫々工場の取引銀行と貸借関係を結ばせることが便益であり且つ迅速に調達なし得るの効果があるからである。
 尚回収に就ても夫々工場は取引銀行の信用保持の面から迅速なる返金が行われるであろう。
(3) 一般市中の金融機関の貸出に就ては該金融機関に対して復興金融金庫において損失の補償をなすこと。
 これは事実上の損失は殆ど無いと信ずるが金融機関が安心して貸出を行う効果を含むのでこの方法を実施したい。殊に復興金融金庫の貸出負担が軽微で済むからである。
 補償金額は政府の製造割当金額の二〇乃至三〇パーセントにて足りると思われる。
 復興金融金庫の市中金融機関の補償については一定の期間を認める。
(4) 市中金融機関の貸出金額に対しては日本銀行において限度外超過貸出をなさしめること。
 若し政府において右方法を行い得ないとするならば農機具生産面における隘路を如何にして打開せんとするやその施策を承りたい。